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ドーナツ化犯罪

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 しかし実際に犯行が明らかになって、刑事たちからいろいろな事実を聞かされるうちに彼も憔悴してしまい、しばらく医者としては立ち直れなくなったということだ。
「あの医者、他の神経内科医の世話になっているということですよ」
「因果応報というか、本末転倒と言ってもいいかも知れないな」
 と言っていた。
「とにかく密室が何か大きな謎のように思っていましたが、分かってしまうと、機械トリックよりも、言い方は悪いですが、ちゃちい気がして、もちろん、予行演習というのがあったからこそ分かったようなものだけどね」
「それともう一つ。プチというイヌが本当に飼い主だったり、河村君の気持ちが分かったからできた犯罪なんだろうね。医者が人間をマインドコントロールするのと比較して考えると、本当にプチの行動は健気で涙が出てくるくらいだよ。よくいうじゃないか、『人間は裏切るけど、イヌは裏切らない』ってね。僕はその通りだと思うんだ」
 僕は、プチが可愛くて仕方がなくなりました。
「じゃあ。お前が飼ってやればいい」
 と門倉刑事は言った。
「ええ? いいんですか?」
「ああ、お前が飼ってくれるというのが、この流れでは一番なのかも知れないと思うんだ」
「じゃあ、お言葉に甘えてですね」
 彼はその後、県警本部長賞を獲得し、刑事課でも次第に頭角を現していく。
 今では彼のことを皆は敬意をこめて、
「プチ探偵」
 と呼ぶようになったということである……。

                  (  完  )



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作品名:ドーナツ化犯罪 作家名:森本晃次