火曜日の幻想譚 Ⅲ
341.みかん
実家から、仕送りが送られてきた。
早速開けて中を確かめる。そこには、大好物のみかんが山と積まれていた。
早速一つ手に取り、こたつに入ってテレビを見ながらむいていく。今までも何度もやってきた作業だ。間違うはずもない。
きれいにむき終わり、さあ食べようかと思ったら、何か様子がおかしい。おやと思って、ふっとテレビから目を離してみかんに目をやると、いつもとは違う景色が広がっていた。
みかんをむいたとき、たまに房と房の間に。小さい房がへばりついている時があるだろう。そのみかんは、その小さい房だけで球体が構成されていたのだ。
まるで何かを切って貼って見繕ったかのようなそのいでたちに気味の悪さを覚え、すぐさまゴミ箱に投げ捨ててしまった。
それから他のみかんもあらためてみたが、特に異常のあるものはない。
あのみかんは、いったいなんだったんだろうか。