火曜日の幻想譚 Ⅲ
344.見当違い
休日の昼下がり。窓から降り注ぐ陽の光の暖かさで、思わずうとうとしていた。
無性に気持ちがいいし、いっそこのまま昼寝としけ込むのもいいのだが、実は最近、夜、眠れない日が続いている。ここで下手に気を失えば、平日である明日に差し障りが出かねない。私は、机に突っ伏しそうになるのをこらえて、ディスプレイの前で首をかくんかくんさせていた。
画面には、何度も聞いたような、配偶者の浮気を突きつけて復讐すると言った話をまとめた動画がこれでもかというほど流れている。最初のうちは、こんな話が大好きだった。スカッとして気持ちがいいから。でも、似たようなパターンに次第に食傷してくる。みんな修羅場をくぐって、地獄に堕ちたり、傷を癒やして再起を図って、といった大きなドラマがあるのに、あっさりとそんな刺激に飽きてしまう。今の私はそんな話を聞きながら、必死に眠気をこらえ、夢と現の境を行き来している。
邯鄲の夢が、誰かの一生を縦一直線ににトレースしていくものなら、今私が見ているものは、誰かの修羅場をひたすら横に並行してザッピングしているようなものかもしれない。
もっとも、私は故事のように何らかの教訓を得るわけでもなく、そっか、結婚って大変なんだな、といういささか見当違いの感想を抱くのが関の山なのだが。