倫五さんの「ほんのちょこっと街ある記」22/津・四日市
やがて何となく街の中心と思える街並みになっては来たものの、背が高い建物も殆ど無く、国道から少し入った城址公園付近にあった市役所の建物も古くて何だか小さいのです。ただ、周辺は文教地域のようで全体的には落ち着いた雰囲気です。
一時的に降った雨も傘が不要になってきて、市役所から数百mほど離れたところにあるらしい近鉄・津新町と言う駅を10分ほど探して何とか着きました。その駅からやっとICカードを使っての乗車です。
津駅からは3kmほどを歩いたことになりました。本当は津市内を歩いて循環出来れば良かったのですが、その時は1駅だけ電車に乗ることにしました。
当たり前ですが、電車内では次の停車駅の案内放送がありますが、「津駅」の場合はこれが何とも語感(?)がおかしい。
「次の停車駅は、ツー、ツー」
あらぁ、耳に入ってくる言葉の感覚が何とも締まりが無い。
地元の人たちは慣れているのでしょうが、初めて聞いた私の中では「こりゃケッサクかも」と腹の中で可笑しくなりました。
もちろん駅の名称が「津」なので仕方ありませんが、たった1文字の発音はどうにか修正は出来ないもんでしょうかね。例えば「次の停車駅は、津です。」とか…
そう言えば名古屋駅から津駅まではJRで来ましたが、その時も車内放送があったのでしょうがICカードの清算のことが気になっていたのか、車内放送がどんな言い方だったのか思い出せません。
とかなんとか思いながら、近鉄を利用してそのまま四日市に向かいました。
◆四日市市【人口 約31万人】
三重県と言えば、伊勢(神宮)・鈴鹿(サーキット)・志摩(真珠)・伊賀(忍者)・松阪(牛肉)…などなど思い出す場所、見どころはいっぱいあります
ただ、私の場合はどこの都道府県を訪れても、取り敢えずは「街歩き」の目線で見るので、三重県では代表的な2つの都市になるのは仕方ありません。
津と並んで立ち寄りたい街が四日市でした。
近鉄・津駅から30分ほどで到着した近鉄・四日市駅は、都会地にあるターミナルビルにも匹敵するような新しくて賑やかなイメージの11階建ての建物です。
近鉄の路線が複数集まる駅のようで、改札を出たコンコースに掲示してある路線図を見ても3方向に近鉄の路線があるのが分かりました。
改札を出て少し広くなっているスペースには出口の名称が書いてあるサイン看板が掲示されています。しかし〇〇方面と書いてあっても土地勘が無い私としては、どの出口に行けば良いのか分からないままにビルの中を5分くらいウロウロ。
そろそろお昼も過ぎた時間だったので、取り敢えず建物内にある食事処で昼食を済ませようかな…と、エスカレータでいくつか上の階にあった飲食スペースへ昇ると、あらぁ5〜6店あるお店の前の椅子にはそれぞれ10人ほどの入店待ちが出来ているではありませんか。
下の階にはカフェなどあったのですが、私はお昼をカフェで過ごす文化を持ち合わせていないので、仕方なくもう一度おしゃれな建物内を見物です。
その時間をお店の前での待ち時間にしても良さそうですが、待つ必要が無い時に行列で待つのは得意ではありません。
そんなことで建物内を回遊していると10階だったでしょうか、大きな窓から街を展望出来るスペースがありました。見えたのは四日市中心部の一部分でしたが、そんな景色を俯瞰出来たのも行列に並ばずにウロウロしたからです。
20分ほどで戻って来た食事処のお店で昼食を済ませ、やっと建物の外に出ました。少なくとも近鉄の駅周辺に限って言えば、津市よりも1ランク上の都会的な雰囲気を感じさせました。
近鉄の駅をかすめて市役所方面へ向かう大通りは片側3車線〜4車線、加えて歩道も広い。そして何よりも中央分離帯の幅が15mくらいはありそうで、しかもその分離帯の中にも樹木が多いのは計画的な街づくりが行われたからでしょうね。
地図で見ると1.2kmくらい先にある「JR四日市駅」周辺も、もしかしたら同じような街並みでは…と期待させました。そこを目指して日曜日の少ない交通量の中を15分ほど歩くうちに、広い道路は維持しているものの何だか段々と寂しい街並みになるではありませんか。
歩く途中で振り返ると、視線のずっと先には近鉄の駅の建物がドンと建っています。しかし向かっているJRの駅の方向には、特に目立つ建物も見えません。何だか街並み自体が尻すぼみの状況です。
広い道路が突然途切れて、目の前にはうらびれた昭和中期の建物のようなJRの駅が目に入って来ました。
つい5分前まで何となく都会的な雰囲気だったのに、まさしくタイムスリップしたようです。2階建ての建物の横幅サイズは70〜80mほどで、まあまあ大きいものの、駅員もいない片田舎の古びた駅舎そのものです。
そこまで歩いて来た整った街並みと、見た目が空き家のような駅舎との落差は何でしょうか。完全に街から見放されたようにも見える駅は、しかしまぎれもなく人口31万人都市の「JR四日市駅」でした。
これまで全国の60〜70都市を巡っているのですが、全く予想出来ない寂し過ぎる姿は初めてで、そしてもう経験することは無いと思います。四国でのあの小さい松山駅を見た時も驚きでしたが、それより2倍も3倍も衝撃的な姿でした。
前日、津に行く前に四日市に立ち寄っていたら、このJRの駅に降りた訳です。
もしそうだったら(駅前に関して)何と寂寞とした街なんだろう…と思ったに違いありません。
私にとっての三重県そのもののイメージダウンが避けられなかったでしょう。建物も惨めなら駅前の広場も惨め、何にも無いのですから。
ただ、推測するに昭和の頃まではこのJRの駅舎も活躍していたに違いありません。
JR四日市駅を地図で見ると引き込み線路などの多さが目立ちます。かなりの取り扱い貨物量がある(あった)と思われますが、それだけに意外過ぎるひなびた外観にやっぱり驚かされます。
さて、気を取り直して、それまでの大通りから1本はずれた通りを近鉄の駅方面へ向かいました。古い商店やマンションなどが多い通りでしたが、そちらはメインの通りとは違いごく普通の街並みです。
そのまま近鉄の駅を通り越した反対側の市街地は、駅ビル10階から眺めたところです。文化会館やショッピングモールや街中公園などがあり、こちら側も広い道路と広い歩道があって、ゆったりした雰囲気がありました。
人口28万人の津市に比べて、31万人の四日市市は人口から言うとそれほど変わらないようですが、私が感じた限りでは全体的な街の様子はもっと差があったと思います。
前日訪れた岐阜市は40万人にふさわしい街並みでしたが、名古屋市の衛星都市・尾張一宮市の38万人を考えると四日市市は地方中核都市としての体裁は十分ありました。
佐賀県周辺の交通網事情をいつも見ている私としては、大都市(この場合は名古屋市)周辺の交通網は想像以上に発達していて、JRはもとより特に私鉄の充実ぶりが目立ちます。人口が多く利用者も多いとは言え、経営が成り立っているのが不思議なほどです。
作品名:倫五さんの「ほんのちょこっと街ある記」22/津・四日市 作家名:上野忠司