One
One chance
二度目のプロポーズの日。
地元につくと、そこは一面の雪景色だった。
傘なんてない。だからただ、雪の中へと飛び込むだけ。
一人静かに駆けて帰ろうとした矢先、背後から急に声が飛んでゆく。
「お父さん!」
耳に響く声。微かに今は知らない娘の姿が浮かび、消える。
もしかと思って思い直す。いや、今更会えるわけなんてない。でも、会えたら……。
振り返ってみた先には、一人の女性。今ならきっと、このくらい。
「……芽実?」
恐る恐る声に出す。可能性だけでもいい。それがたった僅かでも。
「うん!」
強く、短く叫ばれる声に、身体が沸き立つように感じる。
手にした傘を投げ打って、彼女はここへと駆けてくる。
急に重くなる身体。後ろへと投げ出される感覚。不意に下がる右足。
気がつくとこの胸の中にはその手をぎゅっと背へと回した一人の女の子がいた。