分譲と家賃(おしゃべりさんのひとり言 その57)
分譲と家賃
どんなとこに住んでますか?
住所じゃなくって、何に住んでますか?って意味。
マンション、アパート、一戸建て。ホテル住まいってもの。
一般的には(持ち家の方が得に決まってる)って考えてる人多いでしょ。
住宅メーカーの説明じゃ、そう言うに決まってるし、それ以外の結論は聞いたことが無い。
でも、それが確定するほど緻密に計算を立てて家購入した人って、一体どれくらいいるだろう?
僕は逆の計算が立ってたんだ。
例えば車を購入する時って、ローンで何年もかけて買うでしょ。
でも途中で故障すれば修理代かかるかも。事故に遭って廃車になるかも。だから保険に入る。
でも車のローンが終わった頃、その車は古くなって価値が下がってるはず。
半額でも下取りに出せるなら、買おうって気になるけど。
こういうリスクを回避する手段として、たまに乗るくらいならレンタカーでいいけど、毎日乗るなら自家用車もリースってのがある。車検代とかが不要なプランもある。安い中古車ってのも選択肢の一つ。
じゃあ、家の場合は?
メンテナンスや増改築費用がかかったり、災害に遭ったりすることもある。修繕費用は想定してても予定外。そのために保険に入ってる。
新築が古くなって価値が下がっても、土地だけは変わらずそこにある。だからそこに税金はたっぷりかけられる。
売ろうにも上に古い物件があると、取り壊し費用分で販売価格が下がるって聞いた。
長く家のローン払って、保険に入って、固定資産税払って、価値が下がってしまった頃に売るのか? そうしないと相続税を渋々払うことになる。
こう考えると、賃貸でも得することもあるって気がしてきた。
かつて僕にも、家を建てる夢があった。
20歳になるまでに車を買ったので、次は30歳になるまでに家を建てる堅実な計画を立てた。
そのためにお金を借りやすいから銀行に就職したんだけど、その後人生の目標が変わって、家なんかどうでもよくなってしまった。
今、僕の家は借家です。若い時からずっと、賃貸でした。
親の経営してた会社兼自宅を出たのが26歳のころ。
結婚前に同棲して、家賃15万もするマンションに住んでた。
そこは家具や電化製品が付いてる高級マンションだった。
でも・・・。若造が自力でこんな部屋契約出来るはず無いじゃない。
実は当時からお世話になってたボスが、会社で契約したものの、あまり使われてなかった部屋を、社宅として貸してくれたんだ。
会社が5万円負担してくれて、彼女と二人で残り10万円を払ってた。
その会社はとても変な会社で、世間一般の会社として考えたら、話に付いて来れないとこあります。
税金対策でわざと福利厚生に莫大な経費をかけたりしてたから、関係者はその恩恵にあずかれるってこともよくあって、僕らが新しいビジネスにチャレンジするために、赤字覚悟で経費計上してくれることもよく有った。
そうかと思えば、1日にグループ全体で何億も売り上げたり、サイドビジネス的な事業は星の数ほどあったから、実質、何の会社か解らないような感じだ。
そんなある日、ボスがビルを買ったと言った。
金額はいくらだったか忘れたけど、「200コ買った」そうだ。
「200個? 何を?」
「ビル」
「ビル? ・・・200棟?」
「ああ、そうだ」
こんな人いる?
ビルまとめ買いする人。
物件は見に行ってないらしい。当りもあれば外れもあるだろうって。
そのリストを見せられて、「どんな物件か判るか?」って。
僕は銀行員時代に宅建の資格の勉強をさせられてたから、「転売価格を見積もれるか?」って聞かれても、路線価表持ってないし判断出来るはずないでしょ。住所と何階建てかだけでは。
よくよく考えたら、ビル1棟建てようと思ったら、何億かかる?
そんな物件が世界中にどれだけあるの?
でもそれらすべてに持ち主がいるってことだろ、どうやったらそうなれるんだ?
でも、売れない中古物件なら、買い叩くことも出来るんだそうで、企業が何百棟も購入するなんて、日常茶飯事なことなのだろう。
(あれ? このビルの名前・・・)「ここ知ってます」
そこは、僕がまだ小学生のころ、親父がよく連れて行ってくれてたステーキハウスがあるビルだ。するとボスが、
「このビル、5,000万で売ってやろうか?」
「いや安いでしょ!・・・いや無理ですけど」
今はそのビル、綺麗に改装されて、地下から何階かまでお店や事務所が入ってる。その最上階のオフィスを一つ貸してやるとも言われたけど、家賃が30万じゃ無理ですよ、僕には。
でもビル全体が満室になれば、数年で元が取れる計算なんだって思った。
これほどまでの話じゃないけど、そんな流れで貸してくれた冒頭の高級マンション部屋。
一介の銀行員だった僕は、ボスに引き抜いてもらったおかげで、最初っから贅沢な暮らしを体験させてもらいました。
最上階のペントハウスにはケバイお姉ちゃんが住んでたけど、大御所俳優Kさんがその愛人に与えてたものだったらしいよ。
1年後、その部屋を使うあてが出来たからって、僕らは一軒家に引っ越しさせられた。
そこは線路に面した駅の裏、家賃は同じ10万円、3DKの築年数25年くらい。ガレージや庭が付いてる物件だけど、電車の音がうるさい。でも犬を飼えたのがよかった。そしてこの頃、結婚もした。
そして近所付き合いってのも経験した。全然興味のない地域活動に駆り出され、市民運動会にも参加させられる。正直面倒くさいと思ってた。
また、駅に向いた南側の窓が開けられない。いや、開けられるんだけど、光は入らない。
なぜかと言うと、実はそのボスは、エンターテインメント業界の最大手の会長の弟さん。その会社の社宅だったので、駅に向かってでっかい看板を取り付けて、所属アーティストが新曲を出す度に、CDの広告看板になるんだ。
おかげで家は昼間でも真っ暗。3年で引っ越すことにした。
次に移ったのは、またマンションの2LDK。近所付き合いが要らないからね。
地下鉄の駅が5分以内で、その駅の上は役所の総合庁舎。大きな病院もすぐ隣に。マンションは幹線道路に面してたのでうるさいけど、僕の部屋は道路の反対側。コンビニが隣にあって、周囲にはスーパーやレストランがいっぱい。
しかも部屋で犬が飼える。色々探して、そこを見付けられたから急いで引っ越したようなもの。
しかも家賃が10万円。今までと同じでも、ガレージがなかった。近くの駐車場を借りると1台2万円ほど。夫婦で車2台持ってたけど仕方ない。
この頃、段々羽振りがよくなって来てたから大丈夫だった。
ベランダが広くて、下の階の屋根の上だ。そこでバトミントンくらい出来る広さ。そんなことしなかったけど。笑
その先の景色は、マンションの裏側なんだけど、大きなお屋敷が建っていて、立派なお庭が見下ろせる。
娘が生まれて、1歳になる頃まで合計7年暮らした。
作品名:分譲と家賃(おしゃべりさんのひとり言 その57) 作家名:亨利(ヘンリー)