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荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
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天界での展開 (3)

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「うん、そう。実は、お前の家系は、代々魔術・妖術を使う者達を取り締まっていると聞いた。それで、俺は、お前の父上に面会して、今回の仕事にお前を借り受けたいと申し出た。仔細は省くが、お父上は、喜んで俺の申し出を受け入れて下さったぞ。それにな、此処に居る権蔵との件だが、二人を夫婦と呼ぶには、あまりにも歳の差が有り過ぎる。いっそ叔父と姪という関係ではどうかな? それでも、この顔の権蔵さんとは不釣り合いな気がしないでもないが、夫婦よりはマシだろ?」
「はい! 夫婦でさえなければ、どの様な関係でも結構でございます。父も了解したとの事、喜んで地蔵菩薩様の下で働きとう存じます。」
「え~~・・・ そりゃ、ないぞ・・」
「まあ、身内という仲だから、我慢しなよ。」
「地蔵菩薩様、申し上げても宜しいでしょうか?」
「うん、何だい?」
「仔細をお伺いして、この桃花と主倍津阿教授という選出には頷けます。特に主倍津阿教授の博識は、天界で一人としてそれを認めぬ者は居りません。しかし、私の場合、只今は、閻魔殿秘書室第一秘書という役目もあり、折悪く秘書室長様も急な病で・・」
「あ、その事ね。それは、大丈夫だから。彼は、明日には元気で出勤する筈だから。」
「えっ? ・・そうで、ございましたか・・・」
「これ、純真。」
「あ、これは閻魔様・・・」
「お前を人間界へ遣わすと決めたのは、このわしじゃ。お前は、天界きっての秀才と誰もが認めておる。お前に任せておけば、すべての事務は滞りなく進むのは重々承知しておるし、将来に渡ってわしの右腕となり手腕を振るって貰えると非常に期待もしておる。ただ、お前は、学識はあっても、それに伴う経験が少ない。経験の少ないお前をいきなり海千山千の悪どもが居る人間界へ降ろすのも忍びない気もするが、これを乗り切れない様では、お前は、ただの学者バカじゃ。ほんの僅かな期間の人間界じゃが、大いに経験を積み、一回りも二回りも大きな官吏となって、再びこの閻魔殿に戻って来る事を期待しておるぞ。それに、お前が思いを寄せておる清廉との事は、お前が役目を果たして帰り次第、良き運びとなる様に彼女の両親、及び清廉本人と、このわしが、話を着けておる。」
「えっ、左様で・・? 行きます! この純真、人間界で存分に働いて参ります!」
「ちっ! 好いなあ、秘書さん・・」
「まあまあ、権蔵さん。そんなに嘆くなよ。あんた、考えてもみなよ。人間界で一緒に暮らすうちに、男と女の仲だよ、意外な展開になるかも知れないよ。」
「意外な展開か・・ それは、良い方向に考えてもいいのか?」
「どうかな? まあ権蔵さんと桃花次第だね。」
「って、結局は、俺に期待させて、こき使おうって事じゃないか!」
「まあ、そうなるのかな。」
「笑いながら言うことか! だが、一縷の望みは あると思って・・頑張ろうな、若い姉ちゃん。」
「ぅわ~~ん・・・・」
「・・・」
「・・」
「・・・・」
「そうと決まれば、改めてこの閻魔からの裁定を申し渡す。俗名、権田権蔵、お前は、天界の三者と共に人間界に赴き、事成就の暁に、再び天界に戻り来る事を命ず!」
「ありがとう、閻ちゃん。じゃあ、俺は帰るね・・・ あ、そうだ。この間一緒に飲みに行ったお店のエリカちゃん、閻ちゃんがタイプだと言ってたよ。時々は、訪ねてやりなよ。」
「あれ~~? 閻魔さん、その顔で、案外だなぁ・・」
「こりゃ、権蔵! 顔の話は、するでない!」
「だろうな。よく見りゃ、俺より酷いわ。」
「・・・人間界への出発は、十日後と致す!」



作品名:天界での展開 (3) 作家名:荏田みつぎ