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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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愛しの幽霊さま(6)〜(10)

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私たち家族は三人で近所にある和食のお店に行った。お父さんとお母さんは、久しぶりの本格的な和食に満足したみたいだった。

「向こうでも和食の調味料は手に入るようになったけど、帰ってきたらここの料理を食べないとね」

「そうね、ほんとに美味しいわ」

私たちは板前さんが一人で作った料理を囲んで、いろいろと話をした。

楽しかったことは何か、不安なことはないか、そんなことを聞かれて、舞依と遊びに行った話、テストで少しいい点が取れたことなんかを話した。


時彦さんのことを黙っているのはやっぱりちょっと気がとがめたけど、私は何も言わなかった。

久しぶりにお父さんとお母さんに会えて、私は嬉しさのあまり、ちょっと冗談を言いすぎちゃったかも。お父さんはおなかを抱えて笑っていた。






「おやすみ、雪乃。また明日の朝もゆっくり話せる時間を取りたいから、早く休んでね。お母さんたちはあなたと一緒に出るから」

「うん。おやすみお母さん」

「おやすみ雪乃」

「おやすみお父さん」







部屋に戻ってドアを開けると、なんと私のベッドに、向こうを向いて時彦さんが横になっていた。

嘘…時彦さん!そこ私のベッド!え!?どうしよう!

驚いてあたふたしていると、ぐるりと時彦さんの首が回って、彼は私を見る。

「びっくりした?」

した。すごくびっくりしたけど…。


「自分のベッドにいたのが好きな人だったから」なんて、言えないじゃない!


「う、うん…」

私は恥ずかしくなって、目を逸らしてしまった。

「もらったお菓子、食べないの?」

ふと目を戻すと、時彦さんは起き上がって両手を空中に差し上げ、くるくるとお菓子の箱を回していた。アメリカのお菓子は今、日本でくるりくるりと宙を回っている。

まさかこうなるなんて、お菓子も思わなかっただろうなあ。





さくさく。さくさく。う~ん美味しい。アメリカのお菓子ってすごく甘くて困るほどだって聞いてたけど、全然そんなことないじゃん。

「おいし」

私はベッドに寝転んで、スマートフォンを覗き見ながら、お菓子を食べていた。

「おいしい?」

「うん!」

「ふふ、かわいい」

えっ…え!?

私は思わず、急いで時彦さんの顔を見ようとした。

すると、彼がすごく驚いた顔と目が合って、時彦さんは、腕を掛けていたベッドにすぐに顔を伏せてしまった。

ど…どうしよう。時彦さんに「かわいい」って言われちゃった…!

私は一気に混乱とときめきの嵐に突き落とされて、とにかく叫んだ。

「め、めっそうもない!わたしなんて、そ、そんなことないでござる!」

あー変なこと言った!すっごい変なこと言った!なんでこんな時に急に侍言葉になるのよ!?

私がさらに混乱したまま、自分の頭をぽかぽかと叩いていると、こんな声が聴こえてきた。

「ごめん、今のはちょっとおもしろかった」

おなかを抱えて、時彦さんはくすくす笑っている。その時彦さんの顔も私はなんだか可愛らしく見えちゃったけど、それは言えなかった。