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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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愛しの幽霊さま(6)〜(10)

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「今日はお教室はないの?」

「ええ、今日は昼がなくて、夜にお花の会に出かけるけど、夕方までは大丈夫よ」

「そうなんだ。今日はどこに?」

「浅草よ。いつものところ」

「私、一回行ったっけ?」

「ええ。もうずいぶん小さい頃ね。こーんなだった雪乃も、もう中学生なのね」

「ふふ、そうだね」

私たちはそんな話をしながら、叔母さんの作った美味しいごはんを食べていた。

「そうそう。それで、おうちに一人だけど、どう?困ってることはない?」

私は何も言わないつもりだった。

でも、もしかしたらこれは、言わなきゃいけないことを隠しているかもしれない、とも思った。

「んー、何もないかなあ。でも、家事と勉強を一緒にやるって、ちょっと大変かも」

「そうねえ。でも、それは最初は必要最低限でいいのよ。だましだましでね」

そんなことを言って、叔母さんは楽しそうに笑う。お花の先生だけど、こういうざっくばらんなところがあるのが、好きなところかなあ。それに、すごく優しいし。

「でも3ケ月は長いからさみしいでしょうし、ちょくちょく顔を見せてね。きっとよ」

そう言って、わざとちょっとだけたしなめるような顔をした叔母さんに、私は笑顔で「ありがとう」と言った。


“実は家では、幽霊と生活してるんだけど…”と、内心でまたヒヤヒヤとしながら。



食事のあとで私と叔母さんが喋っていると、二階からとととととん、と軽快な足音が降りてきて、台所までそれが駆けてきた。

「雪乃ちゃん!」

力いっぱいドアを開けて現れたのは、まだ少し小さな小学生くらいの男の子。私はびっくりしたけど、いつも仲良くしていた従弟の「雄心」に、「おじゃましてます」と手を振った。

「こら雄心!階段は静かに降りなさい!ドアももっと静かに!」

「だって雪乃ちゃんが来てるんだもの!早く言ってよ!」

「あなたは宿題するって言ったでしょ」

「えー!ちょっとだけお話!」

親子はそんな言い合いをしていたけど、私は結局叔母さんに頼まれて、「少しの間相手をしてあげて」と任されてしまった。

「僕の部屋で遊ぼう!」

「うん、ちょっとだけよ?」

私が席を立つと、雄心は私をグイグイ引っ張り、「早く早く!」と、二階にある子ども部屋に連れて行った。








大変だ。大変なことになった。

ありていに言うと、私は従弟から唐突に、プロポーズをされた。

部屋に入る時、雄心がやたらにそっとドアを閉めたので、私は“叱られたのが効いたのかな?”と思って振り返った。

その時、あまりにも強すぎる目とかち合ったのだ。

「どうしたの?そんな真剣な顔して」

私がそう言った後、雄心はきっぱりと、でも、聞いたこともないような太い声でこう言った。


“大きくなったら、結婚してほしい”





「え…ちょっと待って雄心」

私は、本当に待ってほしかった。とにかく考える時間が欲しい。この子を傷つけないために。でも雄心は、まるで大人みたいなため息を吐いてから、こう言う。

「わかってる。早すぎるって言うんでしょう。でも僕、本気なんだ。だから、ちゃんと大人になるまで考えてて」

その時の雄心の目は、本気であることを私に訴えたかったのか、大きく見開かれ、にらむほどまっすぐに私に向けられていた。その強さに私は戸惑う。

でもすぐに気を取り直して、私は必死に気持ちを落ち着けた。


「わかった。大人になるまで考えるけど、途中で好きな子ができたら、逃がしちゃダメよ?」

そう言って雄心の頭を撫でようとすると、雄心は私の右手首を優しく掴んでしまい、なおも私を見つめた。

「絶対、そんなことない」




叔母さんの家からの帰り道、私はちょっと気重になっていた。

どうしよう。雄心にあんなこと言われたら、叔母さんの家、行きづらいなあ。

そう思っていたのがわかったのか、時彦さんが横から顔を出す。というか、右後ろから?

「困ってるね。そりゃそうだけど」

「う、うん…ほんとに」

「あっさりした男って少ないし、真面目ならなおさらねー」

「もう、他人事みたいに。もうほんとにどうしよう…」

頭を抱える私をよそに、彼は「大丈夫だって」と言う。

それから、夕焼け色に透ける手で、また私の頭を撫でてくれた。