小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

裏表の研究

INDEX|1ページ/28ページ|

次のページ
 
 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。ご了承願います。(ただしこの架空の政府への批判に対し、読者がご想像することに関しては、まったくの自由です。作者と同様の怒りをお考えの方も、少なくないのではないでしょうか?)

                ランキング

 今から二十年以上も前のことになるが、赤坂純一郎が小学生だった頃のことだ。クラスで人気投票なるものをしようという話になったことがあった。当時の学級委員をしていたのは純一郎本人だったので、開催を言ってきた連中との話になった。言ってきたのは三、四人くらいで、その中には女子も勝っていた。
 放課後の皆が帰った教室で、純一郎に彼らが詰めよるような恰好だった。
「何のランキングなんだい?」
 と純一郎が聴くと、
「人気ランキングだよ。言ってるじゃないか」
 と一人が答えた。
「それって不公平にならないか? 下の方のやつは嫌な気分なんじゃないか?」
 というと、
「そんなことはない。ベストスリーだけを発表すればいいんだ」
 と言われたが、それも何か違うような気がして、
「じゃあ、立候補制にすれば?」
 と純一郎は答えた。
 立候補制だとすれば、文句は出ないのではないかという考えだった。
「だけど、そうすると、立候補した人に入れたくない人の票は入らないことになって、投票率とすれば、かなり下がるよね。それの方が不公平なんじゃないか?」
「そうかなぁ。学級委員にしても基本は立候補制だよな。一般的な公共の選挙だって立候補制だよ。なりたくない人にさせられないだろう?」
「でも、それはこれから何かをするための当番というか、役割を誰がするかということの投票であって、人気ランキングとはわけが違う。実際に芸能人やスポ^津選手の人気帳票は立候補なんかしないけどね。どうして赤坂君はそんなに立候補にこだわるんだい?」
 と聞かれたが、正直なところ、この学級委員だって、やりたくてやっているわけではない。立候補もしていないしやりたいと一言も言っていないのに、皆が勝手に決めたことだという思いが強いからだ。
 要するに、
「押し付けられた」
 というわけである。
 押し付けた方は、そんな意識はまったくない。だから、純一郎が立候補にこだわる理由など分かるはずもない。
 ただ、この話はどちらも一方的な話である。純一郎の方としても、いかに嫌な学級委員を押し付けられたとしても、断ることはできただろう。断れない雰囲気であったかも知れないが、そこまで考えなかったのは、純一郎の方も悪いと言えるのではないだろうか。
 逆に押し付けた方も、押し付けておいて、面倒くさいことをしてくれているという感謝の気持ちの欠片もない。
「皆の意見で決まったんだから、当然だろう」
 とでも思っているのか、そういう意味では、
「選ばれたくないものまで選ばれるというのは、何かが違う」
 という純一郎の意見も間違ってはいない。
 そんな意見が飛び交っているのだから、交わることなどあるはずもない。お互いに自分の意見を言うだけで、相手の意見を聞いているわけでもない。
 相手が意見を聞いてくれないというのは、相手が自分に対して思っていることだ。そうなってしまうと、まるで磁石でいうところの、
「反発しあう同極」
 のようなものではないだろうか。
 どんなに歩み寄ろうとしても、相手が逃げるのだから捕まえようがない。磁石というものは、本当に人間の心理をうまく捉えていると言えるのではないだろうか。
 かたや、
――お前たちに押し付けられたんだ――
 と感じる方と、
――何をそんなにカリカリしているんだ。普通に話せばいいじゃないか――
 という二つ、押し付けられた方は、意識して反発しているが、押し付けた意識のない方は、相手の無理な言い訳を不思議な感覚で聞いているだけだった。
 そんな押し問答であったが、結局、多数決で押し切られ、人気ランキングが行われた。上位は、さすがに言い出しただけのこともあり、トップスリーは言い出しっぺが独占した。実際に開票してみると、純一郎はクラスの中で下から三番目というブービーにも最下位にもならないという中途半端に終わった。
――実に俺らしいじゃないか――
 と気分的にはふてくされていた。
 人気投票で、まさかここまでひどいとは思わなかった。さすがに悪くてもベストテンには入っていると思っていた。あわやくばベストスリーも夢ではないと思っていただけに、ショックも大きい、だが、そのおかげか、自分の情けなさが分かった気がした。
「俺って、しょせん、ここまでのやつなんだ」
 人からおだてられて、その気になったり、クラス委員も、
「なんで俺がやらなきゃいけないんだ?」
 と口では言いながら、心の中では、
「期待されているんだな」
 と自分を納得させていた。
「期待というのは、自分がまわりのためにしているということをまわりも意識してくれて初めて生まれるものだ」
 と考えていた。
 つまり、こちらから、
「やっているアピール」
 をしないと、まわりも分からないだろうと思っていたのだ。
 これは、小学二年生の頃に、親から言われたことだった。
 あの頃はよく友達に苛められていて、
「お前は、いつも苛められたりしたら、何も言い返せないから苛められるんだ。嫌だったら、嫌だっていわないといけない」
 と言われた。
 純一郎少年は、下手に言い返したりすると、さらに相手を怒らせることになり、苛めがひどくなるのを怖がっていた。だから、何もせずに相手が飽きるのをじっと待っているしかないと思っていたが、その思いを母親は覆したのだ。
 確かにどちらがいいのか分からなかった。
 もし母親の言うとおりに口答えをして、相手を怒らせてしまったらどうしようという思いがあるので、簡単に母親のいうことをしてみようという気にはなれなかった。そんなことをしてまたひどい苛めにあったら、手の施しようがないと思ったからだ。
 ただ、そんな息子を見て、母親は完全に情けないと思っていた。
「お前のような子は、小笠さんの子じゃない。どっかで間違えてもらってきた子なんじゃないか?」
 とまで言われるくらいになった。
 母親は苛立ったりすると容赦ない性格だった。特に息子が苛められることに苛立ちがあり、ある時から、学校の帰りに校門の前で立ちはだかっていたりしたものだ。
 それは子供を助けようという意思からではなく、苛められていれば、苛め返すように促すためだったようなのだが、さすがに母親が見ている前で苛めをするような度胸のあるバカなやつなどいない。
 親がいないところで容赦なく苛めを行うのであって、しかも、
「お前は母親に学校まで来てもらわないとダメなほど、情けないやつなのか?」
 と言われ、さらに苛めがエスカレートしてしまうのだった。
作品名:裏表の研究 作家名:森本晃次