「ほんのちょこっと街ある記」10/和歌山、京都、大阪
単純に言えば、天皇が住まわれる京都御所の守護と、将軍上洛の際の宿泊所として築城されたとあります。言わば天皇のお住まい、御所のイメージを取り入れた設計になっているのでしょうか、気遣いを感じます。
それは取りも直さず、幕府の安定のために天皇家との関わりを世間にアピールすることにもなります。戦国時代の終焉として、京都と言う天皇居所の地域に戦闘的な形のお城は不要だったのでしょうか。
それはそうと、京都と言えば市内には名所が多過ぎて、とても1日や2日では巡れません。日本中から訪れる人はもちろん、それどころか世界からも注目され、観光での訪問人口は世界でも有数です。
街歩きではほんの一部しか見れませんが、それでも京都にも出かけた…と言う気分が出ればOKです。半日ほどで歩ける範囲はかなり制限され、街並みは右も左も同じように見え、街路表示が頼りになります。
さて、二条城の後は京都御所の方へ歩きましたが、何だか段々と京都の下町のような様子になって来ました。下町と言っても、そこら辺のどこの街にもあるような雑々とした日常の街で、京都のイメージとは違います。
街路樹がある訳ではなし、整った街並みがある訳でもなし、道幅は広かったものの歩道が狭い変な通りです。本当にこんな通り沿いに京都御所があるのか…と思いながらも、確かに地図ではそうなっています。
京都御所界隈が期待外れだったので、そのまま御所のある緑地の横を通り過ぎて、鴨川に向かいました。鴨川と言えば、「京の風物詩」の川床で有名ですが、何せ1月だったのでそんな物は出ていません。
それでもその日は幸いうららかな陽射しだったので河原を散策している人も多く、私もつい水辺に降りました。私が街並みを見るのを中断して河原を歩くのは自分でも珍しいと思いながらも、知名度が後押ししたのでしょう。
鴨川の河原から道路に出て10分ほど歩くうちに、ボチボチと京都らしい風情の街「祇園界隈」に出ました。そして表通りの突き当りに八坂神社の朱色の門が見えて、やはり外国人の姿が多く見かけられます。
傾いた陽射しが朱色の門に反映して、門の付近は雑踏だったにも関わらずぼんやりした景色に見えました。そして訪れた時期が1月中旬だったこともあって、午後4時頃の日陰に入ると少しヒンヤリします。
鴨川の河原でゆっくりした午後1時半頃はうららかな陽気だったのに、2〜3時間で変わるものですね。それでも歩き続けると、じっとしているより多少は体温も保たれるのか、寒さは感じません。
しかし地図を見てみると京都駅までは歩くには遠すぎたので、不本意ながら路線バスに乗ることに。あまり遅くならないうちに大阪のホテルに戻ることを思うと、午後5時過ぎの電車に乗る必要がありました。
歩けば1時間以上はかかると思い、八坂神社近くのバス停から乗車し、約10分で京都駅へ着きました。京都駅には約20年前の工事中の時に来て以来で、その時は工事用シートで覆われていた印象が残っています。
それ以来、久しぶりの京都駅でしたが、初めて見る新しい駅の変わりように本当にびっくりです。良く言えば超モダンなガラス張りで駅ビルも大スケール、悪く言えば京都市には不釣り合いな風体です。
私の街歩きの場合の基本として、その都市のビル街や商店街通りなどの都会型風景を見て歩きます。ところが京都や奈良を歩く場合に限り、むしろ高層ビルなどが邪魔になるのは不思議な感覚だと思います。
改築後、初めて目にした京都駅は、さっきまで浸っていた京都の風情を異次元にしてしまったようでした。建物としては本来の私の街歩きスタイルにマッチしていても、それは他の都市で楽しめば良いことです。
例えば東京の新宿や渋谷、大阪の梅田、横浜のみなと未来…などにあればふさわしいような建物ですね。まあそれはそれとして、駅を単体で見ると近代的で楽しい仕掛けも多く、飽きさせない工夫が面白い。
モダン過ぎるとの賛否はあるでしょうが、誰かに見てもらいたいようなユニークさはありますね。10階建てにも匹敵するようなガラス張りの吹き抜けや、イルミネーションが躍る階段などは秀逸でした。
◆大阪市(人口約280 万人)
佐賀へ帰る日、大阪城周辺の高層ビル周辺を散策して、アベノハルカスを見に行く予定でホテルを出発。15:00頃に新大阪駅に行けば良いので5〜6時間はウロウロ出来ますが、移動は基本的に電車にしました。
いつもTVなどの映像で見ていた「大阪城周辺の高層ビル」は、大阪駅周辺と同様に訪れたい場所でした。大阪城公園へはJR環状線・森ノ宮駅で下車、何とすぐそばの高層ビルまで道路に降りずに回廊風通路が…。
その日は木曜日でもあり、通勤時間帯をはずれると通行人もまばら、ビル周辺も予想に反して静かでした。見上げると3棟・4棟の高層ビルには多くの企業などが入っているのでしょうが、やはり静かです。
初めて入る大阪城公園の敷地はかなり広く、さすがに栄華を誇った豊臣の居城としての貫録ですね。10:00過ぎの時間でしたが、天守閣周囲のお濠に外国人10人ほどを乗せた屋形船が浮かんでいました。
1時間ほどの見学後、森ノ宮駅に戻りそのまま天王寺駅へ、もちろんアベノハルカスを見るためです。天王寺駅の真ん前にあるアベノハルカスは、下から見るとさすがに高く、まさに摩天楼そのものでした。
しかし「見たい見たい…」と思っていた割には、記憶には残っても感動がほとんど無いのは何故でしょう。私個人のおこがましい感想を言えば、建物からは無機質感しか感じられなかったかも知れません。
東京スカイツリーと同じで、確かに高さは高いのですが「何だか楽しくない」のです。最先端の技術を駆使してあんな高い建物を建ててあるとは思いますが、受ける感覚はまた別の話ですね。
せっかくそばに行ったのに、建物の中には1階に5〜6分いただけで、もう歩き始めました。その日は、天王寺動物園をかすめて歩いた先にある通天閣で有名な「新世界」で昼食を摂ることに。
いやあ、大阪の喰い倒れは肩肘張らずに関われるので、コテコテの看板にも臆することはありません。その時に入ったお店で「粉物の上に粉物」のメニュー、お好み焼きの上にたこ焼き…を注文しました。
近辺の通りや店内からも賑やかな笑い声などが響いていて、一人で行っても楽しい場所でした。通天閣も何だか庶民的、大衆的で好感が持て人情味もありそうで「大阪やねえ」と感じさせますね。
そこからは難波も近いのですが、新大阪駅まで行く時間も迫っていたので、次回の楽しみにしました。
作品名:「ほんのちょこっと街ある記」10/和歌山、京都、大阪 作家名:上野忠司