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ボレ ブルバハサ ムラユ


 
今年は地球人類にとって重要なことが起きてから500年という年なのだけど、ほとんどの人は知らんだろうな。10万人にひとりとか、そのくらいの割でしか知らない。
 
だからテレビのニュースにもならない。知ってる人間のおれからすると、とても残念なことなんだが。
 
500年前に人類にとって重要なことが実証された。人類初の世界一周航海をするマゼランの船隊が太平洋を渡り切ってフィリピンに着き、原住民に「ボレ ブルバハサ ムラユ」とか言ってみるとそれが通じた。マレー語で「あなたはマレー語が話せますか」と聞いてみたら通じたのだ。近くにおいしいカレーのお店はありますか。訊くと「ええとね」と応えてくれる。
 
マレー語で。ってことはつまり、ここはマレーだ。マレー諸島の一部なのだ。〈パシフィック・シー(太平洋)〉と自分達が名付けた海を渡るとマレーだった。西へ西へひたすら西へと進んだ先にマレーがあった。ヨーロッパ人が〈東の果て〉と認識していたマレーに到着。
 
画像:東南アジア地図
 
それは地球が一個の玉だということを実証したということである。やったぞ、おれ達は遂にやったぞ。この世界をダンゴに丸めて転がすのに成功したんだ!
 
ということが起きたのが西暦1521年。今年2021から500年前のことなのである。エベレストの登頂だとかなんとかいったことよりすごい。
 
はずと思うが誰も知らない。おれの書棚に松本敏之・著『パシャ! 報道カメラマン日記』(淡交社)って本があり、それにはこう、
 
画像:パシャッ!132-133ページ
 
書いてあって、この人なんかは知ってるわけだが、しかしほとんどの人は知らない。おれが持ってる地図帳にフィリピンはこう、
 
画像:フィリピンの概要
 
書いてある。中に、
《マゼランが来航し、この地で殺害された》
《国名は「フィリップ王の地」の意味》
とか書いてあるのがわかると思うが、
 
   そこでマゼランに一体何があったと言うのか。
 
   国名の意味は「フィリップ王の地」と言うけどどういう意味か。
 
なんて話はおれが小説投稿サイトに出してる、
 
南アラブの羊表紙
https://2.novelist.jp/89820.html
 
これにからめて書いてく考えでいるが、とにかくほとんど知られてない。
 
残念なことだ。『パシャッ!』というのは〈月刊カメラマン〉て雑誌の1990年代の連載をまとめた本で、その雑誌をおれは当時に買って読んでて今でもページを切り取ったのを、
 
画像:クリアファイル
 
こうして持ってたりするのだが、これにはたとえばフィリピンについて、
 
画像:スクープショットブルースvol.5
 
こう書いたのがあったりする。だがマゼランについてニュースにならないように、フィリピンについてテレビがこんな話をすることもほとんどない。
 
代わりに今のニュースが言うのは、
 
「東南アジアで人が死んでいるんですよ! 東南アジアでコロナの死者が出ているのです。ジャワで、スマトラで人が死んでる。フィリピンで人が死んでるのです。これは〈波〉がすぐそこにまで迫っている証拠なのがわかりますよね。日本に来たとき途轍もない死者が出るのがわかりますよね!」
 
なんていうような話ばかりだ。
 
フィリピンの事情は20年前や40年前と変わっていない。それを無視して死者数だけを振りかざし、〈波〉が日本に迫っている証拠とする。日本に来たときそれ以上の死者が出ることの証拠にする。だってこれは〈スペイン風邪〉を遙かに超える史上最大の〈禍〉なのだから、その何倍も人が死ぬとわかるでしょう。
 
池上彰がそう言うからそういうことになっている。アナタ達はただワタシの言うことに、何も考えず「ハイ」と応えて従っていりゃいいんです。
 
池上彰がそう言うからそういうことになっている。コロナに関する限りは決して「でも」も「しかし」も言わせませんヨ。勉強ができる者にはコロナがよくわかるけどアナタにわからないとしたら、アナタの頭が悪いんだから、わかる人間の言うことにただ「ハイ」とだけ大声で応えて従いなさい。「はいはい」はダメ。ハイです。ハイ。不満げな顔も許しません。ワタシはあなたら凡人のために、命懸けで悪のウイルスと戦ってるんだから。フィリピンで人が死んでることが日本で何倍も死ぬことの証拠なのがわからんようなら、ちょっと頭がおかしいとしか言いようがない。わかりますよね。わかりますよね。
 
池上彰がそう言うからそういうことになっている。コロナについて何がなんだかサッパリわからない人は、これに従う他にない。
 
おれは全部マヤカシなのがハッキリわかる人なんだけど。それはさておき、前回おれは、『ウイルス・プラネット』という本のページをスキャンしたのを見せて、
「これには〈旧型肺炎〉の例年の死者が世界で25から50万と書いてあるけどその〈世界〉にアフリカなどの第三世界は含まれるのか」
と書いた。ちと疑問だと。アメリカだけで毎年3万6千人が死んでいるのに世界全体で50万というのはどうも少なく思える。アメリカは〈病める大国〉だろうけれども世界にはそれよりひどい国がたくさんあるだろう。地球人類の半分はそこに住んでいる。なのにアメリカの死者が全体の10分の1程度。
 
というのはちょっと解せない。この著者が書く〈世界〉には第三世界は含まれてないんじゃないのか。
 
という意味で書いたんだが、フィリピンは第三世界に分類される。
 
今回見せた『パシャッ!』のページの最後にある、
《スラムにはもちろん医者もいなければ、住民には医者にかかる金もない。もちろん国の生活保護もない。》
というのは今も変わってないはずなのだが、今はコロナで、
「フィリピンで人が死んでいるんですよ! フィリピンで人が死んでいるんです!」
だ。その数字もどうもおれには、何倍にも水増ししたもんじゃねえのかという気がしてならんわけだけどな。
 
フィリピンは悲しい国だと松本敏之という人は言う。松本零士の〈ザ・コクピット〉シリーズにも、
 
画像:亡霊戦士1 亡霊戦士2
アフェリエイト:わが青春のアルカディア
 
こんな話がよく書かれるが、スペインは悪い白人の帝国だった。なぜマゼランにフィリピンがマレーの一部とわかったと言えば船にスマトラ人の奴隷を乗せていたからだ。その奴隷にフィリピン人の話す言葉がわかったためにここはマレーなのだとわかった。
 
紀元前3世紀にアレキサンダー大王はインドまで行き〈イスカンダル〉と呼ばれたが、それから1800年後のマゼランの時代、ヨーロッパ人はさらに東に行っていた。特にスペインとポルトガルだ。インドの先にインドシナ。マライがあってその先にスマトラがあるのを見つけていた。
 
で、どうするかと言うと、原住民を奴隷にするのだ。スペイン、そしてポルトガルは悪い白人の帝国だった。西の世界から彗星のようにやって来て、東の世界を蹂躙(じゅうりん)する呪いの白イタチ帝国。
 
作品名:端数報告4 作家名:島田信之