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端数報告2

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と言ったのを、
「いや、ここ三日ほど、熱帯夜が続いてるからそのせいだろ。バカがクーラーを強くしてハダカで寝たのが発症したのさ」
と思っていると熱帯夜が終わったときに、
「死者・重症者が急に元に戻りました。奇っ怪です。ウイルスは何を企んでいるのでしょう」
「わかりませんが、これは相当に恐ろしいことを用意してるのじゃないかと……」
なんつってるのを「バカ」と思ってだけいたと書いたが、さすがに厚労省は、真犯人がクーラーだと突き止めてたんじゃなかろうか。幸い、マスコミは皆バカだから気づいていないが、しかし国民に知られるとまずい。
 
自分達が古代進に、〈チーム古代〉になれないということだからだ。彼らは〈チーム古代〉になりたい。この危機から日本を救った英雄ということになりたい。厚労省の役人なんて、『シン・ゴジラ』って映画に出てくる、
 
   *
 
「出世に無縁な霞が関の外れ者・一匹狼・変わり者・オタク・問題児・鼻つまみ者・厄介者・学会の異端児」
 
アフェリエイト:シン・ゴジラ
 
と、そういう人間の集まりじゃないのか。知らんが。とにかく彼らにとって、この〈コロナ禍〉はゴジラの上陸。自分達が〈チーム古代〉になれるチャンスのときなのだ。それをぜひともモノにしたい。なのにあの〈第2波〉が、クーラーをかけてハダカで寝た人間が死んだだけというのはまずい。
 
というので、隠蔽工作することにした。池上彰のもとを訪ねて、
 
「いやあワタシどもとしてもですね、あれが第2波かどうなのかは意見が分かれているところでして」
 
「そうですか。ここだけの話、街頭質問の応えは結構、
『拍子抜けした。〈波〉ってあんなもんなの?』
とか、
『2月・3月の死者の十分の一なんてさあ、映画のダメなパート2より期待外れっていう感じ』
なんていうのが実は多くて」
 
「そ、そ、そうでございますか」
 
「しかしいちばん困るのが、
『〈スペイン風邪〉や〈黒死病〉と較べて同規模かそれ以上みたいな報道ばかりだけれどそれらの千分の一だろう。〈禍〉と言うほどのこれは禍なのか』
というのがね。とても電波では流せられない」
 
「いや、コロナはやってくれます。このワタクシが保証します」
 
「そうですか。期待しています」
 
というのをやって、
 
「主任、いいんですかあんなこと言っちゃって。なんですか『コロナはやってくれます』って」
 
「やってくれなきゃ困るのはやってくれなきゃ困るだろうが。とにかく検査人数を増やして、拡大したように見せかけるんだ」
 
が、12月になって、自然消滅が始まってしまった。風邪のウイルスなんてものは一年で消えて別の風邪ウイルスに入れ替わるもんだというのを、『〈チーム古代〉になれる』という欲望に目がくらむあまり忘れていたのだ。どうする主任!
 
「いかん、いかんぞ。だが待てよ。死者・重症者が増加したな。感染者は減り出したのに。どういうことだ」
 
「たぶん窓を開けてた人が発症したんでしょう」
 
「それだ! これから寒さが増せば、おっち(死)んでくれる人が増えるぞ。百万が死ぬ! そこで食塩水を、完璧なワクチンと言って出すんだ!」
 
「我々が民を救ったことになります!」
 
と思ったら10日ほどで、発症者がガクンと下落。
 
「どういうことだ!」
 
「寒いからって窓を閉めちゃったんですよ!」
 
「なんだとう、愚民どもめ。命が惜しくないというのか!」
 
〈ターミネーター・シリーズ〉の決めゼリフは、なんと言っても、
 
   *
 
「死にたくなければ、来い」
 
アフェリエイト:ターミネーター
 
だ。「アイルビー・バック」とか、なんとかよりも絶対に、おれはこのセリフが好きだ。主任は言う。
 
「よし。こうなったら言おう、『死にたくなければ、寒さが厳しくてもよく換気しましょう』だ」
 
と。意味は【窓を夜通し全開にしろ】だが、そのように正しく受け取る者は少ない。でもいる。マジメな人間が、何百万人もいるのだから、そのうち百万が死んでくれることだろう。非常事態宣言を出し、それとともに言うのだ、
 
 ※寒さが厳しくてもよく換気しましょう
 
――って、それが厚生労働省の今の陰謀なのだとわかるが、そんなふうにうまくいくのか? もうこうなったら百万と言わぬ。せめて十万、いや、一万。去年の2月・3月より大きな〈波〉が来ないままにコロナに自然消滅されたら、いろいろやってきたことはなんなんだってことになる。ほんとに必要だったのか、と後で言われることになる。なんとか、せめてそれだけは避けようというところまで、陰謀の度を下げてるのかな。
 
政府とマスコミがコロナについて言うことなんて、架空請求詐欺みたいでしょう。脅し文句を並べるが、具体的な説明はない。従え、従わないと死ぬぞ。従え、従わないと死ぬぞ。これは最後の警告だ。最終的な最後の最終的警告だ。従え、従わないと死ぬ。窓を開けろ。たとえ寒さが厳しくても、夜通し窓を開けねば死ぬ。お前は死ぬのだ。だから開けろ。
 
そうは言わない。言わないけれど、
『寒さが厳しくてもよく換気しましょう』
の言葉で政府が国民にやらせたいことは明白だ。最近のコロナ報道を見るに、おれはこんな感想しか持てずにいるところなのだが、これはおれという個人の感想に過ぎぬことですから、よい子は本気にしないでください。酒は飲んでおいしかったら、ちょっとくらいおいしく飲んでも構わないんじゃないでしょうか。
 
ただし、飲食店の中で注文しないでくださいね。ヘタすりゃ向こうは営業停止なんですよ。
 
 
   *
 
 
――と、さて、最後に報告。先月初めに『バレずに済めばいいことだもの』と『貴方と私の獄中結婚』を有料にしたと書きましたが、3部だけ売れてくれました。こっからガーンと売れてくれないものかと考えてるんですけど、どうでしょうね。
 
画像:販売実績データ
 
作品名:端数報告2 作家名:島田信之