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百代目閻魔は女装する美少女?【第十章】

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「俺は女の子としては他人にうらやましがられる存在だった。ブロンドの長い髪は母親がトリートメントに気を使って、カーリーにしているのに枝毛が一本もなく、自分でもうっとりするような自慢のものだった。フリフリのついたピンクのワンピースを着せられるとまるでフランス人形のようだった。でも、心の中に何か壁のようなものをいつも感じていた。それが何なのかなかなかわからず、俺は親の言うなり、するなりに従順にするしかなかった。中学に進学した時、回りの女子たちは思春期を迎え、男性アイドルや、サッカーで活躍している先輩の話でいつも持ちきりだった。俺はそんな輪の中に加わることができず、悶々としていた。ある時、ひとりの男子から手紙をもらった。ラブレターってヤツだな。俺の美少女レベルは群を抜いていたので、これは当然のことだった。そこには『君のことが好きです。』と一言しかなかった。俺はそいつのことに恋愛感情などなかったが、逆にどうしてそいつが俺のことを好きなんだろうということを考えてみた。『好き』とは何か?男子と女子が二次性徴を迎え、からだつきや容姿、声が大きく変化している。自分と違うものへの憧れということなのか?それはすべて表面に出ているものだ。確かに食べ物や音楽、絵画などすべて目に見えたり、聞えたり、味わったりして好みが発生している。五感ってやつだな。その感覚が研ぎ澄まされてくるのが思春期なんだろうか?そういう考えになってきた。でも親、兄弟への愛情というものも『好き』という感情に属するぞ。これはいったいなんだろう?別に血のつながった親族に対しては、ルックスなんて関係ない。母親がキレーであれば父兄参観日に自慢ができる程度の話だ。これは内面、心の問題だ。生まれた時から親の愛情で育てられた。親が自分のことを愛するからこそ、俺も親に応えている。相手が自分を愛しているからこそ、自分も同じように思うもの。しかし片思いといのもある。これはどう解釈すべきなのか。心を好きになるというのはどういうことだ。俺はわからなくなった。俺には好きな人がいるのか。あるいは好きな人が必要なのか。それが理解できなかった。こうしてその男子からの告白を受け入れしなかった俺。しばらくして、また手紙が来た。女子からだった。隣の席に座っている娘。いつも俺に親切にしてくれていた。今度はなんとなく安心できた。安心だと?気持ちが安らいでいるというわけだ。俺は女子だ。女子のからだや顔を見てときめくことはないはず。でもなんだか感情が高ぶっている。いままでは何とも思っていなかったのに、相手からのアクションがあって初めて感じた何か。その女子と一緒にいたいと思ってしまう。もっと深く知りたいと考えてしまう。女なのに、女の子を想う。これが恋なのか。その時俺は自分が男だと認識してしまった。いや、もともと男だったことにようやく気付いたのだ。そし長い髪もバッサリ切った。」
((そういうことどすか。それでどうしてジバクになったんどす?))
「俺は自分が男だと思ってからは心のもやもやが晴れた。一応思春期だ。恋をした。」
((さっきの女子どすな。))
「その通り。その娘がくれた手紙には交際したいとかではなく、『友達』になりたいということが書かれてあった。俺はショックだった。だが、そんなことをその娘に言うことはなかった。とりあえず、普通の女の子同士で付きあって、何かチャンスがあれば自分の気持ちを伝えようと心に決めた。そしてしばらく『友達』としてつきあった。これはこれで楽しかった。それまで俺には友達らしい友達はいなかったからな。その娘のそれは同じだったようだ。そういうつきあいが深まれば深まるほど、俺は恋と友情のジレンマに悩ませられることになった。だんだんその娘のことが欲しいと思うようになってきた。いよいよ告白するしかないというところまで追い込まれてしまった。そして自分の腹を決めたその日に事件が起こった。橋の向こうで待ってもらうことになった。突然地震が発生し、橋が落ちた。待ち合わせの場所に俺が到着することはなかった。」
((その娘のことが気がかりでジバクになりはったということどすか。))
「そうだな。つまらない人生だったが、これからというところだったが。」
((つまらないという意味ではうちも同じどす。))
「どういうことだ?」
((うちの実家は紅葉院企業グループどす。))
「なんだと?あの有名な仏壇仏具メーカーの?」
((そうどす。))
「すげえ、お嬢様じゃないか。」
((そんなことないどす。実家には兄たちがいて、うちはおまけの娘でしたどす。欲しいものに不足はなかった。))
「それだけで十分だろう。」
((でもそんなことないどす。人としての満足はモノじゃないんどす。心どす。))
「そうではない。やはりからだも必要だ。からだと心は一体だ。だから俺は性転換手術を受けようと真剣に悩んでそうしようと思っていたところで死んでしまった。」
((そんな部分だけ変えても仕方ないどす。人間はすべてが揃って初めて人間となれるんどす。よくその胸に手を当てて考えてみるどす。その胸は男子にはありまへんえ。))
「そ、そんなことはわかってる。じゃ、じゃまなだけだ。」
((本当にそう思ってるんどすか。それがなくなれば女じゃなくなるんどす?人間ってそんな簡単なものどす?))
「そうだよ。胸がなくなればもはや男だ。」
((でも、男の子にはアレがあるどす。))
「な、なんだアレって?」
((それを言わせるんどす?))
「い、いや。アレはアレ。ソレはソレ。コレはコレ。」
((どれどす?))
「ええい!みなまで言わすな!」
((そこどす!))
「はあ?」
((言えないことこそ、倉井はんが女である証拠どす。))
「それは違う。放送禁止用語だからだ。」
((そういうことを言ってるんではないどす。つまり、乙女としての恥じらいがあるということどす。))
「お、乙女?この俺のどこが?」
((全部どす。))
「わからねえ。」
((それは倉井はんが乙女だからどす。))
「だからそうでないと言ってるだろう。」
((それが乙女。男だったら、何にも反応しないどす。当たり前のことには反応しない。それが男どす。今のやりとり、すべて倉井はんは何らかのアクションがありました。それは心が女だからどす。心は健全な肉体に宿るもの。からだは文句なしに女どす。うちの生徒会の由○はんに比べたらはるかに女どすえ。))
「ちょ、ちょっと待ってよ。どうしてあたしがそこに登場するのよ。今はあたしの方が豊満なんだけど。」
((あれ?失礼しましたどす。こんな妖怪ぬりかべのからだで失礼したどす。))
「待ってよ。そのナイスバディのどこかぬりかべ?なのよ。高尾山も真っ青な急峻な起伏の流線型になにを言うのよ。」
 さっきはチョモランマとか言っていた由梨。東京都の山じゃ大幅にスケールダウンしている。
「おい、あいつはなぜ動かないんだ。ってか、眠っているのか。」
 倉井は都に気付いたのだ。
((あの子は日乃本都はんどす。この生徒会会長にして、閻魔大王光後継者候補見習いどす。))