青い絆創膏(後編)
たかこ:私は病院は行ってないんですけど、ちょっと事情があって、死にたいんです。それだけです
ことのり:そうなんですね
タイガー:ごはん食べられないとか、体動かないとかある?疲れやすいとか
“どうしよう…なんか、私病気だと思われてる?親切そうではあるけど、なんか薄気味悪い…”
私はしばらく返事を書かなかった。でも、その間にも画面は流れていく。
ことのり:もし、落ち込むだけじゃなくて、気力、体力、食欲にも異常が出たら、専門機関の受診をお勧めしますよ
タイガー:早期発見が早道
タイガー:学生だったら学校、社会人だったら職場行けなくなったら病院よ
私はそこで、ギクッとした。
“最近、学校行きたくなくて、全然行かない日もある…。”
で、でもそんなに問題じゃない、私はちょっとひどく落ち込んでるだけで、それに、自分が病気だなんて感じ、しないし…。
たかこ:学生なんですけど、たまに学校いけないときはあります
ことのり:心配だね
タイガー:ちょっと注意かな、でも、寝られない食べられないになったら病院おすすめ(;^ω^)
“そういえば、最近あんまりごはん食べてないかも…お母さんからも、「もっと食べなさい」って言われてるし…。それに、今日はこんな時間になっても寝てない…”
私はそこで初めてそれに思い至った。それまでは、そんなことを気にしてられる状況じゃなかった。
タイガー:じゃ、俺夜食くってくる(^^)/
ことのり:私は眠いので寝ます。たかこさんお体おだいじに
<<タイガー>さんが退室しました。>
<<ことのり>さんが退室しました。>
たかこ:ありがとうございます、ことのりさん、タイガーさん。
もう遅い時間だったのもあって、みんなあっという間に退室していってしまった。それに、ここはなんだかにぎやかな交流の場って感じみたいだった。
“場違い、だったかなあ…”
そう思っていると、私のポケットの中でスマートフォンが二度振動した。それはメールの受信を報せる振動だ。インターネットカフェに入る時も確認したけど、お母さんから五回ほど電話はあった。もしかしたら、今度はメールかもしれない。
私は見たくなかったのに、やっぱり罪悪感からホーム画面を開いてしまった。でも、そこにあったのは“お母さん”という文字ではなかった。
知らないメールアドレスからメールが来ていた。迷惑メールかもしれないと思ったけど、件名でそうでないことが分かった。
「自殺掲示板見ました」
私はその瞬間、ちょっとゾッとした。多分さっき、「初めましてトピ」にメールアドレスを載せてしまったからだろう。
“嘘。メールアドレス書くと、やっぱり送って来る人って居るんだ。どうしよう。でも、ただのメールだし…”
私は戸惑いながらも、内容を確認する。
「私、同じ県に住んでいる者です。お近くなら、これから会えませんか?」
“なにこれ。出会い系サイトと勘違いしてるんじゃないの?”そう思ったけど、私はその簡素なメールに添えられた最後の一文で、ぐらっと頭が揺らいだ。
「一緒に死にませんか?」