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もうすぐ……『花嫁の父』(掌編集~今月のイラスト~)

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「いや、弥生と交際している時にね、観相学に凝っていた女性の先輩に聞かれたんだよ、彼女にほくろはない?ってね、それで口元にあると言ったらさ」
「あら、どういう相なのかしら」
「左側だと仕事面でリーダーをしっかりサポートする相なんだそうだ」
「右側だと?」
「『仕事』を『家庭』に置き換えるだけ」
「あら、吉相だったのね」
「まあ、その頃はプロポーズするって決めてたけど、それを聞いて背中を押された気がしたな」
「それで? その観相学は当たってました?」
「ああ、当たってたよ」
「良かったわ」
 弥生はにっこり笑ってこう付け足した。
「亜弥にも同じところにほくろがあるわね」
「ああ、そうだな」
「きっといい家庭を築いてくれると思うわ」
「そうだな、俺はそう信じてるよ」
「あたしもよ……二人きりになるけど、これからも末永くよろしくお願いします」
「ああ、式が終わったら二人で旅行にでも行くか」
「あら、良いわね」
「二十五周年の時は俺が忙しくてどこにも行けなかったしな……どこがいい?」
「あなたが連れて行ってくれるところならどこでも」
 全く、弥生は亭主の操縦法を心得てる。
 こんな風に言われたら、どうしたって奮発したくなるじゃないか。
 きっと亜弥もこんな奥さんになるんだろうな、と思って俺は笑った。
 決して苦笑ではなく……。
 ところで、胸元のほくろにはどんな意味があるんだろう……件の先輩はもうとっくに退社していないが今はネットで何でも調べられる、明日にでも調べてみることにしよう……。