第三話 くらしの中で
その四
最近独りで暮らすことに慣れてきて、毎日あれやこれや家事を含めて何かしら体を動かして一日が終る。四月の初めまで句会に出席していたが、この会も会場が閉鎖になり、いわば通信という手段で行われることになった。
80代を過ぎた先輩方の集まりなのでパソコンではできなくて、投稿の10句は用紙に手書きして封書で郵送する。まとめ役の方が全員の句を各人に送ってこられ、その中から自分が良いと思う句を選句として再度郵送する。それをまとめたものが再再度送られてきて句会は終了となる。まことに時代遅れというかややこしい。
いっそ休会にすればとも思うがそれは寂しいという思いなのだろう。
これからの時勢はバーチャルでの交流が主流となるかもしれない。
アジアに駐在している娘は勿論のこと、次女と孫ともいつ会えるかわからない。
もしかして私は誰にも会えずにあの世に行ってしまうのではと思うことさえある。
学校を卒業して都会で働いている子供とか、嫁に行った娘とかにも会えないでいる親はいるから私とて同じ境遇なのだ。
自宅の一部を借家にして入居してもらったご夫婦には3人の子供がいるが、それぞれに薬剤師と看護師になり、近くの総合病院に勤務している。
一時は彼らも同居していたが暫くして出て行ったものの独身なので娘達はしょっちゅう来ているから親としては今の世に適しているコースを取らせたといえよう。
都会でばりばりやってると、ひと昔は自信満々だった親たちは今は寂しい思いをして暮らしているのだから。
完
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子