第三話 くらしの中で
その五
そんなきもちの今、フェイスブックの娘のページの自己紹介で大学名が書いてありました。自分も共に喜んだ娘の大学名を見て、その名前を書ける娘は良いなあと思いました。
私はずっと目指していた東京の音大に行けなくて、不本意な地方の大学の英文科を卒業したことに満足していないからです。英語を勉強できたのはうれしいことでしたが、思春期に夢が破れたという挫折感は歳を取ったいまでもトラウマのようにこれまでの人生に付きまとってきました。
娘の大学名を見て、自分が今娘と同一化していないということを悟りました。
娘は一人の人間であり、孫の母親なのだということも。
二人の娘達は独身ですが、誰かと結婚したら良いのにとも思うようになりました。その時私は完全に自分の短い将来を自立して暮らしていきたいと思います。
完
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子