第三話 くらしの中で
その四
今はあれから15年経ちました。今も孫の写真をよく送ってきます。次第にきれいに生長している孫の写真を観ていますが、孫は娘の子供です。
幼児だった当時孫は、ばあばとママは同じほど好きといつも言っていました。
今は勉強に忙しくて私のことなど思い出す暇はないでしょう。
私は孫が元気に順調に高校を卒業し、希望の大学へ入学することができたら良いなと思っています。
大学の資金の一部は支援してやろうと積み立てもしています。
でもあの辛くもあった子守りをしていた頃のことを思い出すと胸が締め付けられるような懐かしさを感じるのです。
私を必要としないほど立派に子供を育てた娘にも拍手を送りたい。
でもそこでかつて私が居たような暮らしは私にはできないのです。私はあと何年生きられるかわかりません。多分何回か会えるとは思いますがそんな境遇のまま私は死ぬのでしょう。
娘は私が老後自分と一緒に暮らすんでしょ、と言ってきました。
でも私は今の家を離れるつもりはありません。
病気をしても一人で入院し、家事がやれなくなったらヘルパーさんに来てもらって暮らすつもりです。私の人生はこれから一人の人生の始まりだと思っています。
料理をしているとき、二十代に自炊をしていた学生の頃を思い出します。そして、家族が母だけだった娘のころのことも。
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子