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第三話 くらしの中で

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子供と同一化は終わった その一


私は二人の娘を育てました。養育の下手な両親の元で育った娘達は、学校生活も平凡ではなく、育てたほうにとってははらはらのしどうしでした。

結果として現在は中年真っ盛りで強い根性を持った女性として自立しています。

養育中のことを思い出すと、可哀想なことをしたという気持ちが強く、子供のしたことに対する怒りはありません。

そもそも子供はどの子も無垢な赤ん坊として生まれ、生まれた(家庭の)環境で性格も世間(主に学校)との順応如何も決まるといえます。

家庭内に両親が居る場合は両親の、つまり夫婦の関係が巧くいっているか否かが大きな影響をもたらし、子供は順調に育ったり、そうでなかったりするわけです。
私達の家庭は後者のほうだったので子供は他所の子のように順調な成長過程を過ごせませんでした。

私は自分なりに教育においても、生活指導でもかなり一生懸命のつもりでしたが、子供にとってはそういうことはどうでも良かったのです。

娘の一人は大人になったとき、自分には家庭がなかったと言いました。
そして子供時代の記憶がないとも。

おかあさん、子供が可愛いと思ったことある?と聞かれました。
そのとき、娘自身がそう感じていたのだから、どう弁解しても親の気持ちは通じないと思い何も言いませんでした。

作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子