第三話 くらしの中で
その四
近所の奧さんは、先が短いから家にはもう手を入れないと言っている。
たしかにその御仁は後三年後に死ぬとずっと言い続けて来たのだから、いつ死ぬかわからぬ身で修繕などする気にはならないだろう。
私は今のところ何もかも物が増えてこれ以上は置き場がないので買わないことにしているが、最近パソコンのデスクとして使っているリクライニングの椅子の背もたれからぼろぼろ破片が落ちてくるので買い替えることにした。
家具屋に行ったら様々な椅子があり迷ったが、革製の物は丈夫だということで一人掛けの安楽椅子を買うことにした。
パソコン用には二年前に買ったリクライニングの椅子を使用し、注文しているデスクはテレビを観るときに使うことにした。
表題の「楽しみ」は何だろうと読み進むと実はそういうことだ。
六月半ばに配送される予定の椅子を自宅に配達してくれるとのことで、その椅子に座ってテレビを観るのを楽しみにしている。
楽しみが少ない生活の中でこれぐらいの贅沢はしても良いだろう。
完
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子