第三話 くらしの中で
その三
一方もう一人の娘はいまや会社勤めの傍ら、まるで相場師のような副業に熱を入れている。どこで学んだのかその世界で利益を得る方法を会得し、債券上はかなりの金持ちになってしまった。
離婚をした十六年前に見知らぬ土地で居を構え子持ちで会社勤めを始めた当時はわずかな月給でのスタートであったが、その時は私が同居していたので食費や赤ん坊の費用すべてを援助していた。亡夫のたっての意思で、子供が小学校入学を機に持ち家も建てた。アパート代が要らなくなって助かると言いその分を貯金していたようだ。
年に四五回こちらに帰ったときに渡す小遣いは、私としては好きなものを買うようにとの思いだったにもかかわらずそれを何年間も貯金をしていたという。
お金に関しては知恵がある子で、子供が一歳未満のときに入った保険の掛け金は生涯千円だという保険に入り今も多分続けていると思う。
まるで蟻さんのようにこつこつ貯めた預金は極少しずつではあったが増えて行き債券に興味を持ち始めたようだ。
少しの利益も使えば消えるが貯めれば雪だるまのように増えていくものだと説教された。その知恵と知識たるや私には全くわからないことばかりである。
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子