夕日に輝く
「これは……どういうことですか?」
「毎年、彼女の命日に少しづつ筆を加えているんです……」
「なるほど……そういうことでしたか……」
「ええ、一緒に歳を重ねて行きたかったのですが、それが叶わなくなりましたからね……」
夕日を浴びて遠くを見つめる淑子の顔……彼女は存命であれば六十代半ばになる、キャンバスの中の淑子は、今ならこうであろうと思われるように年齢を重ねていた。
「若き日の淑子の姿をそのままに留めておきたいとも思ったのですが、私ばかりが歳を取って行くのがなんとも寂しかったものですから」
「そうですか……いや、画の中の奥様はまだ生きていらっしゃるのですね」
「ええ、生きていますとも……私の中でもね……」
夕日を浴びた、好奇心に満ちた快活な瞳。
年齢を重ねた顔にはなっているが、その瞳は今でも遠くにある何かを見つけようと輝いていた。