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好機。

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「最近、お上と太政師殿は──」

 屋敷に戻った中政師は、書斎で側近に漏らした。

「…どうも、上手く行っていないようじゃ」

「それは、好機で御座いませぬか」

「ん!?」 

「中政師様の出世を阻む存在を、体よく排除出来るのでは?」

「石柳、声が高い」

「これは…申し訳ございませぬ」 

 静寂に耐えきれなくなった様に、中政師が口を開く。

「で、どうするのじゃ」

「適当な罪をでっち上げ、太政師を奸臣にしてしまうのです」

「─」

「密かに私兵を動かし、屋敷囲み 自裁を迫れば宜しいかと」

「──」

「既成事実さえあれば、後はどうにで出来ます故」

「─── そちに任せてよいか?」

「御意」

作品名:好機。 作家名:紀之介