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　帰る道すがら、ともえはとても清々しい気持ちになっていた。いつの間にか晴れた空のように、心もすっきりとしている。

「ああそうだ、これ」
「これ？」

　急に颯太が差し出してきた包みを、ともえは無意識に受け取る。

「女に贈り物なんて、母上以外にしたことねえから分からなくってさ……」
「あ……」

　そこでともえはピンと来た。

「もしかして、私に？」
「他に誰がいんだよ」

　拗ねたように言うと、颯太は頭を掻きながら包みを指差す。

「開けてみろよ」
「うんっ」

　肌触りの良い小さな藍色の包みをゆっくり開くと、中には可愛らしい梅をかたどった根付けが入っていた。

「かわいいっ！」
「そっか？」
「うん！　すっごい嬉しい！　いいの？　もらっても」
「当たり前だろ。お前のために買ったんだから」
「へへ。嬉しい。ね、弓袋に付けて」
「ああ」

　ともえは颯太に根付けを渡し、自分の弓を入れた弓袋にその根付けを結んでもらった。

「ありがと」

　以前美琴に尋ねられた、ともえが一番欲しいもの。それがこの梅の形の根付けだった。
　本当は何でもよかったのだが、颯太が身近に感じられるものがいいと思ったのだ。弓袋ならいつも持っているし、根付けならどこでも好きな所に取り付けられる。
　嬉しさで頬が緩みっぱなしになっているともえに、颯太がふと笑みをこぼす。
　その顔がとても男らしくて、ともえはドキリとした。

「なあ、ともえ。オレがお前の婿になるっつたら、お前嫌か？」
「え？」

　梅の根付けに喜んでいると、とんでもない事を言われてしまった。

「なっ、何言ってるのっ！？　婿って、お婿さんって事！？　颯太が？　私の？　どうしてっ！？」
「お前声でけーよ。何だよ、好きな女と一緒になりたいって思っちゃ悪いかよ」
「……そそそそんな事こんな道の真ん中で言うっ！？　普通なの？　これって普通の事なのっ！？」

　完全に自分を見失ったともえに、幸之助が振り返って笑う。

「おおそうか、颯太がともえさんと結婚するか。うん、お前とともえさんなら気も合うし、いいんじゃないか？」
「え？　師範、一体何の話しですか！？」
「あれ？　ああ、そうか、これはまだ内緒だったんだ……弱ったな」
「ちょっと待ってください！　どういう事か、きちんと説明してくださいーーー！！！！！！」