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はなもあらしも ~颯太編~

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 それからも一進一退の攻防は続き、なかなか決着がつかない。
 と、突然今まで何の迷いも無く的を射ていた次の射手である橘の弓が乱れ始めた。

 えっ? 何っ!?

 驚くともえは、辺りを見回す。と、何やら笠原門下の人間が奥の方でざわついている。
 橘や他の連中の様子がおかしい事は気になるが、他人の事を気にしている余裕などない。
 気持ちを切り替え床の感触をゆっくりと確かめ、ともえはいつも通り弓を構えた。
 そして次の矢も的中させた。

 やった! 勝った!

 先ほど橘が失敗したことで、ともえ達の勝利がそこで確定した。
 すると急に道場内が騒がしくなる。

「あなたたち、それでも武人の端くれなのですかっ! 恥を知りなさいっ!!」

 橘の凛とよく通る声が響き、人垣の中から二人の男がくずおれるようにともえと颯太の前に飛び出してきた。
 その男達は同時にともえに向かって土下座をし、肩を震わせながら言った。

「申し訳ありませんでしたっ!!」
「そんなに酷い怪我をさせるつもりは無かったんです! ただ、試合を放棄させようと思っただけで……」

 目の前で謝罪する人物は、あの時ともえの足を殴った男だった。驚くともえ。

「このたわけがっ!!」

 笠原限流の一喝に、一瞬にしてその場が静まった。

「申し訳ありません、師範! 我々はどうしても師範のお考えを通して頂きたく」
「言い訳はきかぬ。ともえさん」
「はいっ」

 急に限流がこちらを振り向き、ともえは慌てる。

「私の不徳の致す所、弟子の教育も満足に出来ない指導者を、どうぞ許してください」
「いいえっ、もういいんです! 怪我も治りましたし、お二人も反省してるみたいだし……」
「いいや、オレは許さねえ」

 折角その場を丸く収めようとしていた所へ横やりを入れ、颯太がまだ土下座をする二人の前にしゃがみ込んで睨みつけた。