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はなもあらしも ~颯太編~

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「颯太さん、言葉遣いはちょっと乱暴だけど、すっごく優しいし、いつでも人のために何かをしたいって思っている素敵な人よ」
「うん……」

 それはともえも知っている。
 だが、ともえよりも遥かに美琴は颯太と時間を共にして来ている。自分の知らない颯太を知っている美琴が羨ましい。もっともっと颯太の事が知りたい。

「美琴ちゃんは真弓さんの事が好きなんでしょ?」

 今度は反撃に出てみた。

「えっ? やだ、もしかして顔に出てた?」

 恥じらいながら眉を寄せる美琴に、ともえは微笑む。

「すぐに分かったよ。美琴ちゃんが真弓さんを見つめる時や真弓さんの事を話す時、すっごく素敵な顔をするもん」
「そうかしら?」
「好きって言わないの?」

 素朴な疑問に、美琴は慌てて手をパタパタと揺らす。

「言えないわ! 真弓さんは、確かに素敵な人だし、好きだけど……憧れって言った方が正しいかもしれないな」
「憧れ?」
「そう。私と美弦にとって、真弓さんは憧れの存在なの。だから、そういう意味で好きとはちょっと違うかも」

 それは恐らく違うだろうとともえは思った。恋する乙女の気持ちは、今のともえには良く分かるのだ。でも美琴がそれ以上真弓への気持ちに付いてともえに語らないのであれば、無理に聞く必要は無い。

「そっか……憧れ。うん、分かる気がするな。真弓さんって優しいもんね」
「ええ。とっても」
「美琴ちゃん。私が颯太の事好きって、絶対誰にも言わないでよ!」
「言わないわ……でも、二人とも両思いなんだから別にいいんじゃない?」
「だだだ駄目だよっ!」
「どうして?」
「恥ずかしいもんっっ!!!」
「ふふっ、変なともえちゃん。でも、私はともえちゃんの味方よ。颯太さんとの仲、きちんと取り持つからね」

 普段見られない美琴の強気な一面に、ともえは苦笑した。

「ありがと」
「じゃあ、手始めに、ともえちゃんは何をプレゼントされたら嬉しいか教えて? 颯太さんに報告するから」
「もうっ、美琴ちゃんったら!」

 それからともえと美琴は手を繋いで道場へと歩いて帰った。


 美琴もいる。颯太もいる。ともえにはこんなにも心強い味方がいてくれる。
 思いがけずして知ってしまった颯太の自分への気持ちは、さらにともえの心の状態を高めてくれたようだった。