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はなもあらしも ~颯太編~

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 医者からの帰り道、ともえは嬉しい反面、まだ思い切り足を動かせない事への不満で複雑な顔をしていた。

「ともえちゃん、さっきから難しい顔をして……すれ違う人たちが皆驚いてるわよ?」
「だって、もうほとんど痛くないのに、試合まで四日しかないのに、包帯取れないから焦るんだもん」
「無理しなければ練習も普通にしていいって先生おっしゃってたじゃない。気持ちは分かるけど、真弓さんや颯太さんたちから出かける前にともえちゃんが調子に乗らないように、しっかり見張っていてくれって頼まれているんですもの。あまり心配かけちゃ駄目よ。私だって心配しているんですからね」
「うっ……美琴ちゃんのその目には逆らえない―――我慢しなきゃ」

 ぶつぶつと低い声でそう言うと、美琴が笑った。

「ふふっ。そうよ、我慢我慢」

 しばらく歩いていると、ふと美琴が言った。

「そう言えば、颯太さんから聞かれたんだけど、女の子が喜ぶプレゼントは何かって」
「えっ? 颯太がっ!?」

 女の子にプレゼントとはこれまた似つかわしくない人物に、思わずともえは吹き出す。

「やだっ! 颯太ってば似合わない!」
「あら、そんな事ないわよ。だってきっとともえちゃんにあげるんですもの」
「え?」

 ともえの動きは完全に止まった。
 ほんの数秒街の往来でともえと美琴は見つめ合う。
 すると美琴はいつもの可憐な微笑みで可愛らしく首を傾げて歩き出した。

「あんなに真剣な颯太さんを見たのは始めてだわ。よっぽどともえちゃんの事が好きなのね」
「えっ? 嘘っ。どうしてっ!?」

 先日の寄席での帰り道の事を思い出しながら、ともえは慌てて美琴の後を追う。

「くすっ。だって、“美琴は髪を結ってるから簪なんかいいかもしれないけど、あいつはいつも一つに結んでるだけだから、簪なんてもらっても喜ばないと思う”って言ったんですもの」
「あ……」

 思わず自分の頭の後ろへ手をやる。
 颯太がそんな事を考えていてくれたという事が心の底から嬉しい。

「――ともえちゃんも、颯太さんの事が好きなのね?」

 コクリ

 無言で頷いた。それを受けて美琴は続ける。