はなもあらしも ~美弦編~
第二話 日輪と笠原 〜後編〜
可愛いだけじゃなくて的中率も高く、まだまだ伸びていきそうな美弦君と組んでみるのもいいかも。
そう考えるとともえは一つ気合いを入れて、美弦の名を口にした。
「あの、美弦くんと一緒に試合に出たいです」
ともえが少し遠慮がちに言うと、すぐに幸之助は頷いて美弦を呼んだ。
「美弦、お前がともえさんと一緒に我が道場の代表として試合に出なさい」
「はい、分かりました」
美弦がそう言うと、その隣にいた真弓が少しだけ心配そうな顔をした。
「美弦、大丈夫かい? 代表だからといって、何も気負う事はないからね」
真弓のその言葉を受けると、美弦はにっこりと微笑んだ。
「この程度の事、真弓兄さまの御手を煩わせるまでもありません。僕とともえさんでそれを証明します。ね、ともえさん?」
「う、うん! 真弓さん任せて下さい!」
「ふふっ、それじゃ期待させてもらうよ」
そう言って微笑む真弓を見て、ともえは絶対に勝ってみせるぞ! と強く意気込んだ――と同時に門下生たちからは拍手がおこった。出場する二人の代表を激励してくれているのだ。
そんな門下生たちの気概ある態度に満足そうに頷いた後、幸之助は二人の名を呼んだ。
「よし、それでは美弦、ともえさん」
「はい」
「はいっ」
背筋を伸ばし、幸之助をじっと見る。
「笠原道場に、二人でご挨拶に行きなさい。相手の代表者とも顔を会わせておくといいだろう」
なんと、敵である笠原道場へ挨拶に行くよう突然言われた。一瞬ともえは緊張して美弦と顔を見合わせた。美弦はともえに向ってニヤリと不敵に微笑んだ後、柔和な態度で幸之助に返事をする。
「はい、分かりました。それじゃあともえさん、着替えて昼食を摂ったら行こう」
「はいっ」
かくしてともえと美弦は笠原道場へ向かう事となったのだった。
作品名:はなもあらしも ~美弦編~ 作家名:有馬音文