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はなもあらしも ~真弓編~

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 と、その前に―――
 ともえは先ほど真弓が言った言葉を思い返していた。
 確か真弓は『僕の大切な人』と言った。
 それって、もしかして……

「あのっ!」

 幸之助の後に続いて道場を出ようとしていた真弓を慌てて呼び止める。

「どうしたの、ともえちゃん?」

 さっきの恐ろしい笑顔はもう消え失せ、いつもの優しい笑顔の真弓がそこにいた。
 そしてその笑顔にともえの胸は高鳴る。

「あ、あの、さっきの言葉、なんですけど……」
「さっき? ―――ああ。それがどうかしたのかな?」
「えっと、だから、その、それって……どういう―――」

 真っ赤な顔のともえに、真弓は思わず吹き出す。

「どういうって、そのままの意味だけど?」
「えっ!? だって、大切な人って……」

 真弓は優しくともえの手を取り、引いた。

「僕はともえちゃんの事が好きだから。大切な人、でしょ? それにこの前池の所で好きだと伝えたはずだけど……ともえちゃんは? 僕の事、嫌いかな?」
「きっ、嫌いだなんてとんでもないっ! すす……好き、です……」

 とうとう言ってしまった気持ちに、ともえは今にも気を失いそうだった。ぐるぐる頭の中で駆け巡るのは、美琴の笑顔。そしてそれをぶち壊したのは真弓の何気ない一言。

「それじゃあ父上。正式に僕達の婚約を決めてください」
「おおそうか。真弓が婿に行くか」

「………………へ? って、それって一体どういう事ですかああっっ!?」