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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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さばは猫である

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「僕ね、会いたい人がおうちの外にいるの…」

そう言うと、お姉ちゃんはしばらくびっくりしていたけど、すぐににまにま笑って、「…女の子?」と僕に小声で聞いた。だから僕は頷いた。

お姉ちゃんはなんだかとても喜んだみたいで、「待ってて!ママに聞いてくるから!」と言って、昼ごはんを作っているお母さんのところへ駆けて行った。


しばらくしてお父さん、お母さん、お姉ちゃんに囲まれて、僕はなんだか念入りにいろいろ聞かれた。

「その子はノラちゃんかな?首輪はついてた?」

お母さんの言ったことが僕にはよく分からなかったから、「首輪はなかったよ」と返した。

「えっと、猫なんだよね?どんな格好?」

お姉ちゃんはうきうきしてそう聞いてくる。

「うん、多分僕と同じだと思う。白くて、体が細くて、とても速く走れるんだよ」

「うーん、その子を探しに行くのか?探してどうするんだ?」

急にお父さんがそんなことを言うから僕は困ってしまったけど、なぜかそこでお姉ちゃんとお母さんが、「そんなの決まってるじゃない!」とお父さんをやっつけていた。

しばらくして、「じゃあさばを外に出して、私と美代子でついていく」とお母さんが言ってくれた。

「お母さん!ありがとう!」

僕は喜んで叫んだ。

「はいはい、じゃあ行きましょ」


初めて玄関の柵が取り払われて、僕はドアの外に出て行った。








外は、とてもたくさんの家があって、とてもたくさんの人が居て、みんなどこかに行こうとしている。いつもはカゴの中に入れられて外に出て、“くるま”に乗せてもらうから、僕はそんなのほとんど見えていなかった。「今から“びょういん”に行くんだ」と思うと、怖くてそれどころじゃなかったし。

その中で、僕はあの子の匂いを探して、地面をふんふん嗅いでみた。でも、歩いても歩いてもなかなか見つからない。


気がつくと夕焼けの時間になっていて、お母さんもお姉ちゃんももう帰りたがり始めた。

「お願い!もうちょっとだけ!」

そう言ったけど、「また明日にしようよ、帰ってごはんを食べよう?」と僕は抱えられて、仕方なく帰ることにした。

家に帰る時僕は落ち込んでいたけど、急にあの子の匂いがして、僕は胸がドキンとした。お姉ちゃんの腕の中でうつむいていたけど、顔を上げると、僕の家の隣にある塀に飛び移るあの子が見えた。

「待ってお姉ちゃん!いた!」

「えっ!?あ!あの子!?」

お姉ちゃんもお母さんもそれで喜んで僕を塀の上に放してくれて、向こうから一足一足、なんだか用心深くこちらに歩いてきたあの子と向かい合う。あの子はちょっと離れたところに腰を下ろして、僕を見て、「なあに?」と言った。僕は心臓がドキドキして、とても嬉しくて、ついに叫んでしまう。

「僕、ここの家に住んでるんです!いつも君を見てるんです!」

そう言って僕は、自分の家の塀から彼女に声を掛ける。彼女は隣の家の塀からじっと動かずに、「知ってるわ」と言った。その声がとても綺麗で、僕は体を震わせて飛び上がりそうになった。

「あの…その…君がとても可愛いから、僕、好きなんです!仲良くしてくれませんか…?」

僕がそう言うと、彼女はちょっとの間横を向いて黙っていたけど、そのまま目だけで僕のことを見て、「いいわ」と言ってくれた。






「さば、もう喋らなくなっちゃったね」

にゃあ〜。にゃー。

「でも、俺たちの言うことはたまに分かるみたいだな」

にゃあー。

「お父さんちょっと、そんなところにティッシュごみ放っておかないで捨ててよ」

「わかったわかった」

「あっ!さば!あの子来たよ!」

にゃあっ!?




「ふふ、仲良さそうね。そのうち、うちで飼おうか?ノラちゃんみたいだし」

「まあいいが…」

「賛成!名前も付けないとね!」

「さばは、なんて呼んでるのかしらね、あの子のこと」

「そんなの俺たちに分かるわけないだろ」







End.
作品名:さばは猫である 作家名:桐生甘太郎