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湯けむりの幻

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春の節分を過ぎ、暦の上では春を迎えた。

この国は実に面白い。菜の花の話題が流れる地域もあれば、まだ冬真っ只中のような大雪に交通が乱れるニュース。小さな国の中で四季は 四鬼の追いかけっこ。みんな逃げているのか 追っているのか そんな事を感じられる。

各地で雪融けが始まった。
「まだ雪、間に合うかな?」

新一は仕事で出かけた先やそれを目的とした旅先で 寂れた温泉に浸るのが好きだった。ラインで知り合ったチャコと、先日出かけた温泉の話で盛り上がったとき、ふと浮かんだ温泉場があった。若い時に行ったことのある合掌造りで知られた岐阜県の高山市。その南に位置する下呂市の温泉場だ。

日本三名泉といわれているのが 兵庫県有馬温泉、群馬県草津温泉、岐阜県下呂温泉。

新一にとっては、何度も(何処も)行ってみたい湯どころではあるが、今回はチャコとの待ち合わせがしやすい下呂温泉に行くことにした。
なんせ、チャコは温泉に入ったことがほとんどない初心者だ。
遠方に出かけて気疲れしては、せっかくの温泉の楽しみも味わえないかもしれない。
新一は、そう考えたのだ。
それにチャコを誘い出すには、「美人の湯」といわれているのもいい。

薬泉としても有名な有馬温泉や草津温泉とは違う1000年以上の歴史を持つ下呂温泉。
ネットで調べてみると 泉質は「アルカリ性単純泉」Ph値が高く、無色透明のほんのり香るなめらかな湯がチャコの素肌をつるつるにしてくれるだろう。
そんな湯に チャコと一緒に浸かりたいと思った。

ひとくちに下呂温泉といっても、飛騨川の両岸から山の中腹まで大小の旅館・ホテルが50軒以上の温泉場が点在している。
変わり種といえば、秘湯というにはあまりにも開放的な露天風呂がある。
地元では『噴泉地』と呼ばれる無料の公共露天風呂なのだが、なんせそこ…
下呂市の中心を流れる益田川の河原にある24時間入り放題の露天風呂なのだ。
開放感といえば、橋の上からも周囲の温泉宿からも 絶景丸見えされる風呂。
新一は、にやりとしたが、さすがにチャコを誘うことはできないと諦めた。

作品名:湯けむりの幻 作家名:甜茶