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狐鬼 第一章

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夜闇(やあん)の中
夢すら見ない深い眠りから今、少女は目覚めた

祭り後の精神的消耗、肉体的疲労から回復するには
可也の睡眠時間を要する

に、しても寝過ぎた

御伽話に心当たりがあるならば、と彼や此れや尋ねるが
名前以外は碌に覚えていないと答える母親に憮然としながらも
何とか朝方近く迄、離れ座敷を探したが結局、見付ける事は出来なかった

身勝手なのは承知の上だが、苛立ちの余り
「もういい、寝るから放って置いて」と、付き合ってくれた母親に
言い放ったが此処迄、放置されるとは思わなかった

真逆、怒った?とか

朗らかな性格の母親に於いて、其れはない
ないが、何時迄も其処に甘えている訳にもいかない

其れも分かっている

息を吐き、額に滲む汗を手の甲で拭う
起き上がる気力もなく、壁の丸窓に目を遣れば
雲と雲の隙間に今宵の月が煌煌と見せる

刹那、言いようのない怖気に全身が総毛立つ
寝床を這い出る少女は外縁に続く障子を思い切り、開く

竪桟が戸枠に搗ち合う音が響くも
軈て、屋敷内は水を打ったように静まり返る

「、嘘だ」

拙く、立ち上がる少女の言葉通り
数十人の信者が同居する此の屋敷では有り得ない事だ

「あいさ、…あおじ!」

童子の名前を呼ぶ
月明かりの下、目に付く障子を次次に開けて行く

「何処?!」
「何処にいる?!」

辿り着いた童子の部屋、障子の引手に手を掛け一気に引く
だが、薄暗い室内には誰の姿もない

思わず声にならない悪態を吐く

そうして身を翻すや否や、駆け出す
寝間着の裾をたくし上げ屋敷の廊下を誰一人、出会う事無く駆け抜ける
其れが意味するモノは分かっている

唯、自分には如何する事も出来ない

障子にぶち当たり止まる
其の手が障子の引手ではなく、組子を掴む

「母さん!、開け…」

障子紙が破れるのも構わず、少女が障子を開け広げる

作品名:狐鬼 第一章 作家名:七星瓢虫