小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

僕の還るべき場所~愛する君に伝えたいコト

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
.No Title
 春には君と桜が見たい。夏には海に行きたい。秋には紅葉狩りに出かけよう。冬には灰色の空を眺めよう。すべて君と一緒に…。僕の願いは贅沢なのかもしれない。それとも、願いとは言えないくだらないただの日常生活だといわれるかもしれない。でも、僕にとっては願いなんだ…。

 季節がまた一つ流れた。僕は相も変わらずベッドの上から外を眺める。暖かい日差しと空気はどんな香りがするのだろう。
随分と外の空気に触れていない。窓を開けることを許されていないから。人形たちが何かを言っている。何を言っているかわからない。人形たちは仮面を被っている。笑顔の仮面だ。笑顔の仮面と声が不気味なほどマッチしていない。人形たちに管理されているこの場所に僕たちは収容されている。。不良品の人形たちがくる場所がここなのだろう。人形より劣るであろうと思い込んでいる僕たちを虐げ、嘲笑して自己満足している愚かな人形…。滑稽だ。だからこの場所にしかいないのだろう。

僕たちはネジが一、二本飛んでしまったのでここにいる元・人間だ。僕たちはネジを戻すためにこの収容所に収監された。

ここははこの世の底辺だ。この世界は汚い部分を隠蔽する。僕たちは世界に弾かれた。

僕はこの世界で花の時期と呼ばれる時をこの場所で過ごした。僕の仲間たちは花の時期を大いに咲きほこった。僕は、花びらをむしり取られ、二度と咲き誇らない様にと根っこから抜かれた。僕はもう花として機能しない…。
それでも僕はもう一度戻りたい…。

僕のここでの生活は想像を絶した。花の最盛期である僕は格好の獲物だった。恥辱・凌辱の果てに自尊心をも傷つけられ僕はボロボロだった。

花の時期の僕は拘束され身動きが取れなくなってから、異性の人形に恥ずかしい部分を見られ世話をされる。同性の人形は沢山いるのに…。風呂にさえ入れてもらえないまま一週間ほど経過した。寝返りさえうてない、この環境で何度自分の頭の上を太陽が昇り、沈んだのか…。僕は生きてここを出られるのだろうか。人間ではないから、このような扱いなのだろう。

僕は個室に移動した。一週間寝たきりで僕の筋肉は衰えた。歩けるようになるまでと簡易トイレを置かれ、外側から鍵をかけられた。それでも地に立てる喜びを僕は忘れない。決して勘違いをしないでほしい。僕の身体は健康そのものだ。絶対安静という重症患者ではない。ただのネジが一、二本飛んでしまった元・人間だ。

.泡沫の夢
 僕はとても幸せな夢を見ていたのだろう。その幸せな夢がどうしていつまでも見れるなんて思っていたのだろうか。夢はいつか覚めるもの…。わかっていたのにどうして目覚めたら涙が止まらないのだろうか。

目が覚めたら何時もの風景…。なんてことはない。あぁ…。そうだ。僕は収容されたんだった。冷たい壁、奇声、悲鳴。ここは本当に同じ世界なのか?僕の体と心が急激に冷えていくのを感じた。僕と同じ元・人間たちが不良品の人形たちにまた合法な薬物を強請っている。「やめろ」と僕の心が叫ぶ。戻れなくなる。僕たちはもう一度あの世界に帰るんだろう?みんなで帰るって…。
僕は自分の非力さを思い知らされた。僕たちの生きる意味は何だ?不良品の人形たちの生活を守るためにここで飼いならされているのか?
僕たちは死ぬことも許されない、生きた牢獄に閉じ込められている。僕たちは僕たちの力だけでここを出なくてはいけない。みんな合法薬物に汚染されていく。もちろん僕も例外ではない…。人間としての機能、生殖機能を失うほどの薬物。身体の健康は失われ、車いす生活という将来が僕を待っている。決して車いすを否定しているわけではない。
ただ僕は本来飲まなくていい薬物を大量摂取させられた結果としての、薬物の被実験体としての結果だ、という事だ。健康な体の人間はさぞ実験体として価値があるだろう。研究者は大金が入り、データが集まれば多くの人に恩恵をもたらすことができるのだろうから…。その陰に犠牲になる存在が居ることを忘れないでほしい。僕は望んで、実験体になるほど聖者ではないのだから。あくまで名目上都合のいいモルモットだったから。

僕の体は長年の大量の薬物によりもう二度と健康で正常な体には戻らない。身体も自尊心も傷つけられ、僕の残りの時間では決して癒えることのない深い、とても深い傷を負ってしまった。命と引き換えにしては代償が大きすぎた。自尊心が癒え無かったら、僕はもう僕ではないと感じている。僕という人格、人間が否定され、じゃあ僕は誰なのか?僕はこの世界に存在しているのか?存在はしているのだろう。イレモノという形で。僕は世界から否定され、尚この世界に形だけ留めてしまった。生きていると言えますか?僕は誰に答えを求めていいのか未だに分からずに此処に立ち尽くしたまま、風化されるのを待っている。

.No Title
 この人形たちと七年以上付き合いが長引くなんて誰が想像しただろうか…。僕は随分とここの暮らしに慣れてしまったようだ。順応力とういうのはほとほと怖いものだ。

ここでの生活は現実世界とは比べ物にならないほど酷いものだった。人間としての尊厳はなく、僕は相も変わらず合法薬物の実験体としての毎日を過ごしている。僕のこの日々がみんなの役に立てれば生かされている僕に、きっと僕が僕としてこの世に存在していたと生きた証になる。そう信じる事で僕はまだこの世に原型を留めることが出来ている…。

今日も奇妙な声で目が覚める…。今何時だよ…。僕は重く、いうことの聞かない身体に力を入れる。上手く力すら入らない…。ったく、いい加減してくれよ。僕はもう僕の身体ではないものに今日も嫌気をさしながら起き上がる。

薬物の切れた仲間が朝日が昇る前から大声をあげている。幻聴が聞こえているのであろう。誰でもいいから、早くどうにかしてくれよ。みんなが起きてしまうだろう。人形どもは時間きっちりにしか動かない。そこが人形らしい。各部屋から怒声が響き渡る。仲間がケンカを始めた…。みんな直ぐに起き上がれないから、口喧嘩だ。どの部屋からもうるせぇ!と聞こえる。みんながよく休めていない。治療と称して牢獄にいれられているが、悪化するばかりだ。僕は本当にここから出られるのだろうか…。

午前六時。ようやく洗面台が使える。朝はなるべく早く色々済ませなくては一気に混むから、最低限のことをして僕はベットに戻る。朝食まで横になる。ウトウトしていると、会話のキャッチボールが成り立たない仲間に絡まれる。僕はそんな仲間と話すたびに研究者、人形たちがとても憎くなる。だけど、一番許せないのは自分自身だ。仲間がこんな風に壊れていくのを何もできなくただの傍観者でいる僕が一番許せない。そして誰も僕を責めないから、責めようがないから僕は自分の狂気をこの世界に向ける。生きてこの底辺の世界から抜け出せたとしたら、僕はこの世界に復讐をする。ただ、それだけを思い僕は今日も人形どもの侮蔑にさらされながら僕の一日が始まる。