sakura
師走の出会い
さくらと会うのは2度目である。1度目は食事をするためであった。交際サイトで知り合ったので、5,6度のメール交換をした後、携帯の番号交換をした。
明は72歳であるが、さくらは30歳であるから、さくらの目的は、明には想像できていた。明も小遣いを渡すことは考えていたから
「会うたびにお小遣いいただけますか?」
と言われた時には
「相場でいいかな?」と答えた。
「初めてですから、相場を知りません」
「希望はどのくらいかな?」
「コロナでお店がつぶれて、生活費に困っていますから、多いほうがいいですが、ホテルのお付き合いで、2万円くらい欲しいです」
「いいでしょう。相場ですね」
「嬉しいです」
「店がつぶれたっていうなら失業保険があるでしょう?」
「自分で経営していました」
「飲食関係?」
明は言葉を発してから、接客の飲食ではないだろうと思った。
知的な顔の印象から感じたのだった。少しぽっちゃりしていたし、化粧も派手な感じではないからだ。
「リラクゼーション、知ってますか?」
「言葉だけは聞いたことがありますよ」
「一昨年の10月に開業したのですが、初めは計画したように、5年ほどの経験がありましたから、その個人的な付き合いから、客足は良かったんですが、年が明けたら、2人の従業員と家賃を払うと、自分の取り分が0になりました。それから2か月頑張りましたが、政府の援助も開業したばかりで、対象外だと分かり、店じまいしました。お店は夢でしたから、貯金と借金の100万円合計300万円が一瞬で消え、80万円の借金だけが残りました」
「今はどうして生活してるのかな?」
「知り合いのリラクの店でバイトです。料金の4割が収入ですから。客が取れなければ0もありますから、厳しくって、交流サイトに手を染めましたね」
「では、僕が初めてではない訳?」
「2人逢いましたが、ホテルは行ってませんよ」
「なぜ、ぼくならいいのかな?」
「年配だから、安心できる」
さくらの車を止めたまま話し続けた。明はすぐにホテルに入るつもりだったのだ。15時に商談の約束がある。小山から足利まで電車で1時間ほどかかかるから、13時2分の電車で帰らなければならない。10時に会ってから、30分ほど時間が経っていた。
「ホテルに行くか食事で帰るか、 どちらか一つ」
「お金が欲しいからホテル」
「分かりました。近くにしましょう」
「車は駐車場に入れます。待っていてくださいね」
明は唖然とした。さくらの車でホテルに行くと思っていたからだ。
10分ほどでさくらは戻ってきた。明は待つ間、彼女は戻って来ないかもしれないと、そんな気もしていたから、さくらの白いコート姿が見えた時は、待ち焦がれた彼女に会えた感じであった。
「ナビで調べましたら、徒歩で10分くらいにラブホテルがありますから、時間的にそこにしましょう」
さくらはスマホを見ながら歩きだした。