蜘蛛の糸
ああ、もう少し彼女の面倒を見てあげていたらと、無念さと後悔に襲われましたが、これも寿命を全うした崇高な美しい姿なのだと、自分に都合の良い言い逃れとでも申しましょうか、心のうめきから、少しでも解放される唯一の詭弁とでも申しましょうか、よく頑張ったねと小さく声をかけながら、愛おしむ様にしてシコンノボタンの傍らへ埋葬したのです。
彼女の一生はここで終わりをつげたけれども、直ぐに新たな始まりがやってきます。
彼女が卵を何処かに産み付けていれば、やがて来年の春先には、必ずこのシコンノボタンの枝先に、彼女の子供達が競うようにして、美しい螺旋状の網をかけるのを、再び目にする事でしょう。