夜の街、ウサギと少年
少年は、何が面白いのか自分でも分からないが、笑っていた。ウサギを捕まえようと今日まで追い掛けていたのだが、捕まえて、それが本当に起きたことだとは、今も信じられなかった。夜空を見上げて笑っていた。
ウサギのちいさく震えていた様、あの真っ赤に染めた顔を思い出すと、少年の心臓はどきどきと破裂しそうだった。胸が苦しくて、抑えようとしても、笑ってしまった。
「次は絶対に、離さないぞ」
少年は胸を押さえながら、夜空にそう誓ったのだった。
遠い遠い西の国の話。平和な街に、一匹の人の形を持ったウサギがいました。そしてそのウサギを追い掛ける、一人の少年がいました。次は手離さないと、そう誓って、ウサギを追い掛けていました。
夢を撒くウサギと眠らない少年の物語は、いつまでも、長い間終わることはありませんでした。
作品名:夜の街、ウサギと少年 作家名:白川莉子