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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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「キコちゃんはちょっと小さい」〜出会い編〜

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「えっと…食べものがあることに感謝をしてー…食べる前にその気持ちを表す挨拶、だよ…?」

これで合っているんだろうか。俺はあまり自信がなかった。まあでも、当たらずとも遠からずくらいにはなっているはずだ。キコちゃんは納得したように「へえ~」とちょっと驚いてから、嬉しそうに「いただきます」を言って、なんと手づかみで納豆の豆を持った。あ、やば。

「きゃー!なにこれ!」

キコちゃんは、手に持った納豆がねとねとねばねばしていることにびっくりして叫んだ。

「あ、それ…体にいい食べものだよ」

俺がそう言うとキコちゃんは、「信じられない」というように真っ青になったけど、なんとかおそるおそる納豆を頬張った。そして、かぶりついた格好のままもぐもぐと口を動かす。変わった食べ方だな。

「んー…」

見ていると、キコちゃんはだんだん嬉しそうな顔になって、彼女からすればずいぶん大きな納豆の一粒を、あっという間に食べ終わってしまった。

「…これは、美味しいです!」

俺を見て、彼女はどこか勇ましく目を輝かせていた。俺は女の子がそのままでは何か忍びなかったので、さり気なく彼女の口の周りをティッシュで拭ってあげる。

「それは良かった。他のものも気に入るといいけど」



ここでキコちゃんからの結果発表である。

キコちゃん曰く、納豆は100点だったらしい。ごはんもポテトサラダも美味しいそうだ。ただ、彼女は最後にこう言った。

「キャベツは…私は次からは、いらないかなと思います…」

俺がすぐさま、「ダメです。野菜は体にいいから食べようね」と言うと、キコちゃんはおろおろしていた。おおかた、野菜が苦手な子なんだろう。しかし、俺の家で世話になるのだし、家主の言うことは聞いてもらう。

まあ、キコちゃんの体に、健康か不健康かの当てはめができるのかも、俺にはわからなかったけど。


「あ、そうだ、おやつ…」

「そうだね、このビスケットはキコちゃんにあげるよ」

そう言うと、キコちゃんは嬉しそうにわくわくと俺が包みを破るのを待っていた。

「硬い…ですね…」

俺が砕いてあげたビスケットを手に持ち、彼女はちょっと戸惑う。俺が「まあ食べてみなよ」と言うと、キコちゃんは渋々ビスケットに口をつけ、サクッと音がした。

しばらくはザクザクとビスケットを噛みながら彼女は無心で目を閉じていたけど、もう一度目を開けると、無我夢中でビスケットにかぶりついて、これもまたあっという間に食べ終わった。

「素晴らしいです!」

「どーも」

「あ!こ、こういう時の挨拶はないんですか!」

「ふふ、“ごちそうさま”っていうのがあるよ。大体食べ終わったら毎回言うけど」

「ごちそうさま!です!」

「はい、俺もごちそうさまでした」

その後もキコちゃんは、おなかがいっぱいになって寝てしまうまで、ビスケットを食べていた。ビスケットは2枚なくなった。