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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 5 たっぷり時間はあったのに

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第3章: 土曜日の出来事



 土曜日の昼、春樹は完全に組み上げたガンプラを、険しい表情で睨んでいた。そのプラモデルにポーズを付けて、どんな色彩で塗装しようか悩んでいるのだ。しかし何か違和感を持って、まだ完全には満足出来ていないようだ。
(どこかバランスが悪いんだな)
そう思いながら、足をやや前後に開いてみたり、片腕を伸ばしてみたり、しっくりくるポーズを探しているのだが、
「ダメだ! こんなんじゃ満足行く仕上がりにならない!」
そして、椅子の背にもたれ込んで、天井を見上げながらが、
(やっぱり、改造するしかないか)

 このプラモデルは『ユニコーンガンダム』と言うモデルで、やたらと装飾が大きいデザインだった。そのせいで、足が細く感じられ、どんなポーズで立たせても不安定感をぬぐい切れなかったのだ。素人目には、大した差ではないかもしれないが、春樹は日本中のモデラーが注目するクリエイターである。(と、本人が勝手に思っている)
「膝関節から下を、全部0.5㎜だけ太くしてやる。待ってろ。そうすればカッコよくなるからな」
誰に話しているのやら、二日続きの徹夜は、精神を破壊するには十分なようだ。
 足を解体し始めた。一旦接着し下地を塗った部品を外すのは不安だが、春樹ほどの腕前になると、部品も一から製作できるほどだ。何躊躇することなく分解し始めた。そうして、パテでほんの少し厚みを増していき、また一から硬化するのを待って、削り出して表面を滑らかにし、下地を塗って、合計3時間で満足のいくフォームになったのだが、完成予定だった時間はとうに過ぎてしまっていた。
「まだまだ眠れないぞ。まだ今回のメインの塗装が待ってるからな! さあ、来やがれ! ユニコーン!!!」

     ・
     ・
     ・

「ゴメン、待った?」
 合コンの待ち合わせに、みのりが遅れて来た。
「何よ。あんた、一番楽しみにしてたくせに遅いわね」
恵美莉が少しきつく言っても、ギクシャクするような仲じゃないから大丈夫。
「気合よ気合。どの服にすっか悩んでたのよ」
「まあそれでいいじゃない? 似合ってるわよ」
「でもイヤリング忘れたの。何か持ってない?」
「クリップぐらいなら」
「あぽたん!」