哀れな中年の愚かな夢
記憶が薄れないようにと、日記風に何処で何をしたかということを、出来るだけ細かく書いて残した。
そうして、何度も何度もそれを読み返しながら、その場面を思い返している。
「アイツを殺してくれたら、キミとセックスしてもイイよ」
ある時、冗談とも本気とも取れるように、そう言ったよね。
オレが驚いた顔で、レモンを見ると、
「ウソ、ウソよー、キミにアイツを殺せるわけないよネ。アイツは空手の有段者で、クマみたいにでかくて、ケンカ慣れしてるから、逆にキミがボコボコにされちゃうかもネ」
そう言って、バカにしたように笑ったっけ。
オレだって、相手に夜襲をかけて、木刀で殴りかかって殺すことぐらい、できたかもしれないのになぁ……。
どうせなら、元彼を殺してでも、レモンとやればよかったなぁ……。
あぁ……。
レモンにもう一度会いたい。
一度だけでいい。
会えたらもう死んでもいい。
一度だけでいい。
レモンに会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会いたい。
あぁ……。
ふぅ……。
死にたい。
中年の哀れで滑稽な恋は、こうして終わりを告げたのである。
作品名:哀れな中年の愚かな夢 作家名:忍冬