僕の弟、ハルキを探して<第二部>(改訂版)
Episode.16 闘いの傷
僕が一班のみんなの前で「この世界はおかしい」と言った時、みんなは戸惑っていたけど、どうやら僕たちはそれでひとまとまりとなることが出来たと思う。あれからヴィヴィアンさんもそこまで僕に冷たくなくなったし、ジョンさんも同じで、ロジャーさんは変わらず僕を気遣ってくれた。吹雪さんもアイモも、僕を頼りにしてくれた。
僕はその後すぐに、オズワルドさんに会いに行くために外出届を提出したけど、議会に行ってもオズワルドさんは会議に追われていてなかなか会えなかった。どうやら今、議会は真っ二つに割れてしまっているらしい。オズワルドさんを議長から引きずり下ろしたい人たちと、オズワルドさんを支持する党派の人たちでの争いが絶えずに、混乱が起きているらしかった。僕は街に出た時に新聞を買ったけど、モンスターの急襲がいつだったのかと、それから議会での混乱を揶揄する記事、それから経済面ではこの世界に移ってからの人々の目覚ましい活躍などが書かれていた。
街は、明るい。人々は互いに助け合って、「ハルキ様」を頼りに暮らしている。僕の弟の言葉が速報に載ると、広場に居る人たちは新聞売りの少年からこぞってその紙をもぎ取っていく。少年はそれで新しい服や靴を買い、家族にも暖かい服などを買ってやる。人々は速報を読んで、春喜が「東の林に水源がある」と言えば穴を掘って井戸を見出し、「北の果ての木になる実からはこれこれの薬が作れる」と言えばそれを探し当てて、病人を癒やした。
僕はそれらを眼下に眠り続け、時たまタカシの口を通じて導きを与えるだけになった、弟を想う。弟は人間として生きることは出来なくなった。そして、おそらくオズワルドさんが言った通り、神の力を宿し続けるためには人の力では足りないため、春喜は眠り続ける。それは果たして幸せなのだろうか?そして、神を得てもなお闘い続けなければいけない人々の現状は、果たして前より良くなったと言えるのだろうか?
僕は早くオズワルドさんに会って、このことを相談したかった。そして、それは五回目に外出届を提出して、議事堂に行った時に出来た。
作品名:僕の弟、ハルキを探して<第二部>(改訂版) 作家名:桐生甘太郎



