小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

僕の弟、ハルキを探して<第二部>(完結)

INDEX|14ページ/34ページ|

次のページ前のページ
 

Episode.20 怒れる兵士たち








「ん…うん…」

「ああよかった!目を覚ましたんですね!」

僕は自分が唸っている声で目を覚まし、目を開けると理子さんがそこに居た。

彼女はほっとしたように僕を覗き込んでいる。僕はそれに驚いたけど、彼女が居るということは僕は家に居るということだ。

でも、自分の命が安全だとしても、これが確かめられない限り僕の心はまだ戦場にある。


「戦場は…」

僕のその言葉に理子さんは、一瞬だけ悲しそうな顔をした。それから表情を繕い、こう言う。

「心配ありません。ハルキ様が現れ、すべてそれからはハルキ様の手で敵は一掃されたそうです」

僕は重く怠い体を腕で持ち上げて、ベッドの上に起き上がる。

「やっぱり…あれは、春喜…」


戦場で僕は、青い光をまとって宙に浮き上がっていた少年の後ろ姿を見た。それはやっぱり、僕の弟だったのだ。


「お体はどうですか?痛むところは?」

彼女は僕が考え込んでいるところへ僕の顔を覗き込み、それから僕の体を確かめたそうに、あちこち見ていた。

それはすっかり慌てて混乱しているようだったけど、僕がなんともなさそうだと知ると、彼女は僕の顔をもう一度見つめ、嬉しそうな、悲しそうな顔をした。

そしてそのまま、堪え切れなかったようにわっと泣き出す。

「…傷が…とても深くて…しばらく吹雪様がこちらにいらして、癒して下さっていたんです…私、どうしたらいいかわからなくて…」

困り果てて咽ている彼女を見て、僕は思わず彼女を抱きしめた。細く小さな彼女の体を、胸の奥に押し込むように引き寄せる。

僕のことを思って、彼女は過ぎた事にまで胸を痛めてくれる。僕はそれを強く感じた。

「もし僕がこの人を悲しませることになったら」と思うと今まで、触れることすら出来なかったけど、その時の僕は、自分を止めることが出来なかった。そんな必要を感じなかった。



今抱きしめてあげなければ、この人はもっと悲しむ。そんな気がしてぎゅっと抱くと、彼女は泣き止むまで静かに僕の腕の中で震えていた。



腕を解くと、彼女は恥ずかしそうに微笑んでいた。それがとても美しいから、彼女の涙があまりに温かいから、それから先のことをまだしてはいけないように感じた。

「ありがとう」

それだけ僕は言った。彼女は何も言わず嬉しそうに笑って、僕はその時、幸せだった。