チャンス♪
「ふぁあぁ~」
手で隠す間もなく、葉月ねーちゃんが漏らす 大きな欠伸。
何回目かで、ついに噛み殺し損なった様だ。
目も閉じているし、今がチャンス。
素早く正面の席から腰を浮かせた僕は、右手の人差し指を突っ込んだ。
直ぐに閉じる、葉月ねーちゃんの口。
第一関節あたりに、唇と歯の感覚が伝わる。
違和感を感じた様子の葉月ねーちゃんは、舌の先で数回 僕の指の先をつついた後に目を開けた。
驚いて軽く開いた口から、素早く僕は指を引っ込める。
「─ どうかした?」
「な、何で…私の口に指なんか入れるんですか!」
「前のお返し」
唇を尖らせる葉月ねーちゃんに、僕は顔を寄せた。
「手で隠さないで、人前で大欠伸をする人間は、指を入れられても仕方ないんでしょ?」
「う…」
「ああ。口に指を入れる時は、事前にちゃんと言わないと不味いんだっけ」
沈黙のにらめっこ。
葉月ねーちゃんが頬を膨らませた。
「私がシンちゃんの口に指を入れるのは良くても、逆は駄目なんです!」
いつもの様に、理不尽な物言いだ。
「まさか、他の女の子に こんな事してませんよね?」
「大丈夫。こんな事、葉月ねーちゃんにしかしないし」
「─ どこが、大丈夫なんですかぁ。。。」
何故か若干、葉月ねーちゃんの機嫌が良くなった。。。