続・くらしの中で
その二
母が生存中に言った言葉の端くれを時々思い出すことがある。
その一つに、学生時代にいつも一人でいる人がいたので声を掛けたら愛想のない態度をとられたと。多分その人は他人と和することは嫌だったのだろう。
要らぬことはしないほうが良いのだと、そのとき思ったものだ。
幸い今の所、五月蠅く寄って来る人はいない。人が恋しくなればこちらから声をかける気持ちはあるのだ。決して引っ込み思案でも引き篭もりでもないのだから。
そのような者には無駄な親切心を持たない方が良い。どうしてもしがみついていたい場合は、決して相手が自分を欲してはいないことを心にとめておいた方が良い。縁を切りたくないなら低頭にお願いするのが良かろう。
だが人によって、プライドというものは得てして勘違いをするもので、相手が自分を尊敬し慕っているというトンチンカンな意識を持つ。
相手が近寄らなくなったり申し出を断ったりしてきた時はすんなり受け入れるのが無難だ。本人が思っているほど尊敬もされていないし愛着も持たれていないことを悟ったほうが賢明だと言えよう。
完