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続・くらしの中で

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その二


今は先方の息子もわが娘も中年になり、それぞれが会社を運営する立場になった。
わが娘の長女は今アジアの国で税理事務所の責任者として奔走しているが、フェイスブックにはかなりの頻度であちらの情勢や生活のことを書いているので仕事関係の多くが「友達」に登録している。

私もフェイスブックで「友達」登録しているのでその記事を見て娘の生活状況を知ることになる。


今日の午前中は一年に一度の予約をしている総合病院の検査に出向きMRIを撮って帰った。この検査は五年間同じ状態なので何事もなければ墓場まで持って行ってくださいと検査の終了を告げられた。

午後は多少疲れていたので横になりうとうとしていたら、突然携帯が鳴り響いたのでびっくりして飛び起きた。掛けてきた相手はその一で書いた彼女からである。

姉ちゃん、知ってる?と開口一番に言うので何事かと思ったら、長女の名前が●●新聞に載っていたというのだ。娘がフェイスブックにアップしているミャンマーのクーデターのことなので、クーデターの状況は逐一読んでいるが私的に足は突っ込んでいないので、どんな難事に合っていようが心配もしないし私が動揺することもない。

それだけ私と娘二人は自立しながらお互いを見守っている関係で、ましてや何があっても海外で生活している娘をどうこうできるはずもなく、近寄れば迷惑をかけるだけの能力しかないのだ。


ところが電話の主は興味本位で娘のフェイスブックのページに度々コメントを書いているようで、最近は私のページにはほとんど来ず長女のほうにべったりくっついている。

姉ちゃんと遊びに行きたいけど断られたとも書いていた。今の私は神戸にも行けないほど足腰が弱くなっているのになんであの未開発の外国に行けるかと思っているので迷惑な話だ。

実をいうと自分の娘に他人があまりべったりのめりこまれるのはうれしくはない。もし私が誰かの息子か娘に御執心になったらどうだろう。

まあ、安全な時期なら勝手に行けば長女はそれなりに案内するだろうけど、親としてみれば過酷なほど奔走している日常を送っている現在可哀想で行けない。
もっとも私の体力では行くことはできないけど。


今の危うい政権交代の時期、何もできない私はあまり熱心にニュースを観たくない。今日電話を掛けて来た彼女はコロナ禍で観光バスが来ないので店を閉めており社長業はお休みしている。

遊びに来てと言われたが、社長として経済的な愚痴もあろうし、長男のこと、わが娘の住む国の治安のことなど話題は重いものになるから遠慮しようと思う。

 
  完
作品名:続・くらしの中で 作家名:笹峰霧子