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続・くらしの中で

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信じられること その一



随分前から聞いていた心理学的、仏教的観点からの心の問題である。
ストレートに言うと、自分が相手に対して思っていることは相手も同じように思っていると言うこと。

相手から嫌なことを言われたからとか、やられたとかいうのなら原因があり、自分も嫌だと思うのは当たり前であるが、そうではなく言動には見せないけれど心の中で思っていることが相手の心にも生じているというのだから怖いのだ。

嫌だと思っているのは表情でわかるが、それとも違う。
悪い意味の以心伝心である。


普段は表情に出さず対応をしているつもりが、ある出合いで我慢が出来ない気分がふつふつと湧いたことがあった。

私の親しくさせてもらっている友人のフラダンスの発表会に声を掛けられて見に行った時のことだ。友人から会が終ったら某喫茶店で待っていてくださいと言われた。言われた通りにその店に着くと、友人が誘っていた二人の女性も同席していた。
その中の一人は以前、某生活勉強の会に一緒だった人で、その時はとても丁寧な物腰に好感を持っていた。

その後再度友人の誘いで出かけた折に、又その女性が同席していた。色々話す内に、あまりにも話すペースが遅く、初心(うぶ)を丸だしにした話にとても気分が悪かった。
例えば、友人が私のことを紹介するのにネットの話を持ち出し、SNSの中では男の友達がいるそうですよと話した。いつも言わなくても良いことまで私のことをその場にいる人に披露する癖がある友人ではある。

その時の反応が生娘のような質問をしたのだ。ご主人はやきもちを焼かれないのですか?とリアルとバーチャルを混同したような質問をしてきた。その時は適当に返事していた。


何年か経ち、友人から誘われた席にその女性が同席していた。前回と同じくイライラするような子供っぽい話をし始めた。御年70歳はとうに超えていると思われるその人は、小柄で可愛い感じを持たせる女性で、けっして相手を攻撃する言葉を発する人ではないが、その生ぬるいやんわりさが私に刺さった。
旦那様とは手を繋いで歩くとか、まるで幼稚園児の話す内容のようであり、話すペースも人の三倍ほどゆっくりしている。

退席したい気持ちがむらむらと湧いた私は、「やっぱり馬が合いませんね」という言葉が出てしまった。
そのあと小一時間四人が話をし、帰り際にその女性は私に向かって、「自分が思ってることは相手も思っているもんですね」の言葉を放った。
何の動揺もなく話すそのど根性には私だけでなく友人もたまげたと言う。

店を出ると左右の別れ道で、その女性は「ご一緒に帰りませんか」と丁寧に声を掛けてきた。私は、けっこうです、こちらから帰りますからと反対の道から帰ったのは勿論である。


作品名:続・くらしの中で 作家名:笹峰霧子