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シチュー

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冬の陽射しが独書室ことボクの部屋のリビング兼仕事場の窓から差し込んでいる。
あれ?前にもそんなことを言っていたな。暦は冬という季節だけれど 寒さをあまり感じない。これは何故だ? ボクの感覚が呆けてきたのだろうか。いや老化でもそれほどの年月が経ったわけでもない。キミがボクの部屋に居て ボクの鼻に届くように小細工をしている所為だろうか。いや ボクにとって キミが居るその事に心が踊る。暖かなヒマワリが…いやこたつに丸まったような猫を抱きしめているような気持ちで原稿用紙にむかうボクが居る。

いつしかばれたボクの独断で選んだカーテンは 片側だけ閉められている。
ボクの留守に合鍵で入り込んだキミは見つけてしまったのだ。それでも何も言わないキミ。しかし、なんだ? キミは来ては半分だけ閉める。気に入っているのかな? まだ訊く勇気がでない。後ろの気配は キッチンからだ。新しい料理を覚えてきたのだろうか? ご機嫌なご様子に 訊いてみるのもいいかもしれない。そんなことを考えながらも ボクのお気に入りの万年筆は軽快に走ってくれる。

ふふーん。とキミの鼻歌が聞こえたようだ。振り返ってその顔が見たい。いや やめておこう。見なくてもわかる。でも「にゃん」と言わないキミは 何を作っているのだろう?
そもそも キミがキッチンに居ることが 摩訶不思議なこと。ボクの背中の後ろのいつもの場所で いつもの敷物の上にちょこんと座っている。それがキミ。

「もう少しにゃ。にんにんにゃぉ。タマァ甘にゃん。コトコトにゃぁ」
可笑しな呪文が始まった。ボクの耳が喜んでいる。誰かが聞いていたらどう思うのかなんてことは考えない。ボクが楽しければ きっとキミは嬉しいよね。
コツンコツンと鍋の淵にあたる… 木しゃもじの音。
まったりと鼻腔にまとわりつく冬の香り。
シュルシュルとキッチンからボクの背後に近づいてくる気配をボクは振り返らずに待つ。どんな風にボクにまとわりついてくるのかなぁ。少し我慢。あと少し…我慢我慢。もう、もう? あれ? 戻っていってしまったようだ。
ボクは、待ち方を間違えてしまったのだろうか? 考えろ! わからない…。

作品名:シチュー 作家名:甜茶