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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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ショウゲキ

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 ある寒い日のこと。女子大生のエミがアパートの自室に入ろうとしたとき、隣の部屋のドアが開いた。彼女がそちらを向くと、部屋からそこの住民のショウが出てきた。2人はとりあえずお互いに軽く頭を下げた。その直後、エミは彼の右手首に透き通った赤いビーズのブレスレットがしてあるのを見て、自分の左手首を見た。自分が身につけているものと同じ種類だとわかった。
(こんな偶然って、あるのね……)

 約2時間後、エミは夕飯を作り始めた。キャベツを切っていたとき、不注意で左の人さし指を切ってしまった。
「あ痛っ!」
 患部は痛み、少し押すと血が出てきた。
「あーあ…」
 彼女は患部を流水で十分に洗い、よく拭いたあと絆創膏をした。そのあと、夕飯作りを再開した。さっきよりも注意深くなって。


 翌朝、不思議なことが起こった。絆創膏をはがしてみると、何と昨日作ったはずの切り傷がきれいさっぱりなくなっていたのだ。エミは驚きを隠せなかった。
「うそっ、昨日できた傷がなくなってる。でも、どうして?」
 念のため傷が付いたと思われる箇所をさわってみたが、全く痛みを感じなかった。

 ところで、その日は可燃ごみを出す日だったので、彼女もごみ出しに行った。ごみ置き場に行くと、そこには隣に住むショウがいた。エミは小さく
「おはようございます」
 と言った。ショウも
「あ、おはようです」
 と返した。昨日と同じように、エミの視線は彼の手に向いた。よく見ると、彼の左手の人さし指の先には絆創膏が巻かれていた。何を思ったのか、彼女は彼に尋ねた。
「左の指、どうしたんですか」
 ショウは答えた。
「ああ、これ、朝起きたら切り傷できてたんですよ。寝てる間に何かで切っちゃったのかな」
 エミは、それを奇妙に思ったがそれを言葉にできず、代わりに
「あぁ、そうですか。お大事にしてくださいね」
「あ、ありがとうございます」
 彼は照れたような顔をしてうなずきながら言った。

 ごみ捨ての帰りに、ショウが話しかけてきた。
「今日も寒いですね」
「あ、そうですね」
 そうこうしながら歩いているうちに、自分たちの部屋のドアの前に着いた。2人は、
「それじゃあ」
「あ、ではまた」
 と言ってそれぞれの部屋に入った。自室の中で、エミは昨日の出来事と今朝の出来事のことを思い巡らした。
(私のけがが治って、今度はあの人が指にけがをしたなんて、何だか妙ね……。まるで、私のけがが移ったみたいな……。いや、けがが移るなんてことはあり得ないわ)
作品名:ショウゲキ 作家名:藍城 舞美