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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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拾ったお面

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 ケンジの家に着いても、お面から聞こえる笑い声は止まらなかった。彼は相変わらずそのお面の顔を見ながらげらげら笑った。あまりに笑い過ぎたので、2回もトイレに行った。しかし、約20分後、彼はいつまでも笑い声を発するお面に対する気持ちが変わった。
(いつまで笑ってんだよこのお面……。気味が悪い)
 ただでさえお面は多かれ少なかれ不気味な雰囲気があるのに、声の聞こえるお面は余計に気味が悪い。
(そうだ、きっとこいつには音声装置が埋め込まれているんだ。壊しちまえば聞こえなくなるかも)
 ケンジはお面を手に取ると、思い切り床にたたきつけた。お面は二つに割れた。その瞬間、ケンジはばたりと倒れ、両目を閉じた。


 翌日、ケンジの突然の無断欠勤を不思議に思った職場の同僚の1人が、アパートの管理人とともにケンジの部屋を見てみると、倒れているケンジを見つけた。彼の呼吸は既に止まっていた。彼の同僚も管理人も、ケンジの遺体のそばにあった二つに割れた白いお面を見たが、
「何だこりゃ。何パーティーの仮面だよ」
 と言った程度で、さほど気にとめなかった。


 その後、あのゴミ捨て場にはケンジにそっくりな顔のお面が落ちていた。
作品名:拾ったお面 作家名:藍城 舞美