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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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拾ったお面

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12月のある日。ケンジが、仕事の帰り道にごみ置き場の前を通っていると、そこから何やら笑い声が聞こえてきた。笑い声の音源を探っていると、ごみ置き場の地面にある一つのお面が目に止まった。そのお面は、全体は白色で眉が太く、唇は赤く小さめに塗られている。まるで日本一笑えるあのお殿様の顔のようだ。それを見たケンジはぷっと吹き出した。
(こんなおもろい物、誰が捨てたんだよ……)

 彼はそのお面を手に取って見た。それはまるで笑い袋のように笑い声を放っている。もちろん、ケンジが驚かないはずがない。
「何だよこのお面」
 笑い声はするが、お面の口は閉じたままである。ケンジは思った。
(このお面、前を通るものに反応して声が出るタイプのやつかな)
 彼は不思議がっていたが、次第にゆかいな気分になり、彼自身もげらげらと笑いだした。彼のそばを通り過ぎていく人々は、奇異なものを見る目で彼を見つめながら去っていった。ケンジはそれにすら気付かず、そのお面をそのまま持ってかえった。
作品名:拾ったお面 作家名:藍城 舞美